原発の規制強化で、電力会社が経営危機に? 廃炉費用は料金に転嫁も
原子力発電を安全に運用していくための新しい制度作りが進んでいる。
7月8日からの施行が決まった原子力発電所の新規制基準。これまでなかった重大事故対策が導入されるなど大幅な規制強化となった。原子力規制委員会はこれを基に全国の原発の安全性を審査し、再稼働すべきかふるいにかける。
世界から立ち遅れていた原発規制が真に地震大国・日本に見合った世界最高レベルになるかは、田中俊一・規制委員長が言うように「審査で魂が入るか」に懸かる。
「魂を入れる」ために必要なのが、安全性が疑問視された原発を廃炉に導くための仕組み作りだ。現行制度では、稼働開始から40年未満の原発を廃炉にすることは想定されていないため、事実上、早期の廃炉が不可能であるからだ。
新規制の導入と同時に、原発の廃炉に関する会計制度の見直し論議が始まった。経済産業省資源エネルギー庁は、6月25日、山内弘隆・一橋大学大学院教授を座長としたワーキンググループ(WG)の第1回会合を開いた。
電力会社は通常の建物や設備と同じように、原子炉やタービンなど原発設備に関しても、一定期間で減価償却を行っている。現行制度では電力会社が想定より短い期間で廃炉を決定すると、原発設備の残存簿価を「減損損失」として一括で特別損失処理する必要がある。
加えて、原発の場合、解体など廃炉作業は20~30年に及び、その費用も巨額(大型炉で700億円前後といわれる)になる。そのため、「解体引当金」として40年での積み立てが義務づけられている。40年未満での廃炉となれば、その費用の積み立て不足が生じ、やはり特損として一括処理される。
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