原発の規制強化で、電力会社が経営危機に? 廃炉費用は料金に転嫁も

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電気料金へ転嫁が可能に

ここで問題となるのは電気料金との関係だ。

残存簿価、廃炉費用の引き当て不足とも特損で一括処理すると、その費用は料金算定のための原価に算入されない。実際、国内では過去に東海、浜岡1~2号、福島第一1~4号の計7基の廃炉決定事例があるが、いずれも一括処理され、料金原価からは除外されてきた。

ところが、減価償却費や解体引当金は通常、営業費として料金原価に含められる。廃炉決定後の減価償却や引当金も同じ扱いとすれば、廃炉関連費用は電気料金へ転嫁することが可能となる。

こうした会計制度の見直しで恩恵が大きいのは、廃炉を迫られる電力会社。またその株主と債権者だ。日本原電の主要株主は東京電力、関西電力、中部電力、東北電力などの電力会社であり、1000億円を超す多額の債務保証も行っている。

また、「政府にとってもリスク回避になる」(アナリスト)。これまで原発は国の設置認可や安全審査を受けて運営されてきており、規制委の活断層認定によっていきなり廃炉を余儀なくされれば、電力会社が国を相手取り訴訟を起こす可能性もあるためだ。

一方、電気料金を払う利用者の負担が増えることは間違いないため、安易な電気料金への転嫁は許されない。ただし、廃炉作業にかかる膨大な費用を電力会社が負担しきれない以上、利用者が支払わなければ、最終的には税金という形で国民が負担することになる。

二度と原発事故を起こさないためにも、新規制基準を骨抜きにしてはならない。安全かつ円滑に廃炉を進めていくための会計の見直し論議は非常に悩ましいジレンマを内包している。

週刊東洋経済2013年7月6日

中村 稔 東洋経済 編集委員
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