「共謀罪」創設なら国民が過度に監視される

警察の権力も司法取引や通信傍受で肥大化

通信傍受はいわゆる”盗聴”ととらえられる可能性がある。これも憲法21条「通信の秘密は、これを侵してはならない」に触れるおそれもある。2000年の「通信傍受法」の施行以来、警察は109事件(薬物犯罪85件、銃器犯罪15件、組織的殺人9件)で実施し、640人を逮捕した(警察庁調べ)。

今回の法改正によって、通信傍受の対象犯罪はこれまでの4類型に加えて、爆発物使用の罪や放火、殺人、窃盗、強盗、詐欺、恐喝など9類型の犯罪が追加。加えて、これまで通信事業者の施設で行われていた通信傍受は、暗号技術を活用、記録の改変ができない装置を用いることで、警察施設で捜査に関係していない警察官の立ち会いで行うこととされた。これはもう茶番としか言いようがない。

対象となっている通信は、電話(固定・携帯)のほか、その他の電気通信(電子メール、FAX)も含まれる。コンピュータについては2011年7月に施行された「コンピュータ監視法」が存在する。警察は通信傍受の拡大を受け、従来以上に捜査に利用するだろうし、後に述べる共謀罪が成立すれば、捜査のために積極的に利用しないとも限らない。

要件があいまいで、恣意的な運用も

形式的には裁判官の傍受令状の発布を得て行われるものの、裁判官の令状請求に対する却下率は、逮捕状で0.06%、捜索・差押令状で0.07%にすぎない。これまでの通信傍受令状の請求は325件で、すべてが発布されている。要は危険性とは、通信傍受要件のあいまいさであり、警察の恣意的な運用でいくらでも可能という点にある。

捜査の困難性や数人による共謀状況、犯罪の組織性といった要件は、いずれも極めて抽象的で、その疎明(そめい)は警察官の恣意的な捜査報告書で行われる可能性がある。先般、麻薬取締官が捜索・差押令状の請求に虚偽供述調書を使ったとして警視庁に逮捕されているが、警察官による同じような捜査も繰り返し指摘されており、かなり危険だ。令状審査の裁判官もこれを見破ることは不可能に近い。

振り返ると、これまでも組織犯罪対策法として、「暴力団対策法」や「組織犯罪処罰法」、あるいは「テロ資金提供処罰法」、「犯罪収益移転防止法」、通信傍受法、コンピュータ監視法などが次々と制定された。

中でも、犯罪組織のマネーロンダリングやテロ資金の供与を阻止するため、2016 年10 月までに犯罪収益移転防止法が改正・施行。金融機関といった民間事業者に薬物犯罪収益など、200を超える重大犯罪による収益と疑われる取引の届出を義務づけ、金融機関から情報を警察に集めるようなシステムがつくられた。2015年中のマネーロンダリング事犯の検挙件数は389件に上る(平成28年『警察白書』より)。これはまさに行政的な手法による犯罪情報の収集なのだ。

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