「共謀罪」の拙速な新設は、将来に禍根を残す 刑法の原則「謙抑主義」を失ってはならない
1月20日に始まった第193回通常国会で焦点とされている議題は2つある。「今上陛下の譲位問題」と「共謀罪の新設」だ。譲位問題については、その経過がメディアでも詳しく報じられているが、もうひとつの共謀罪についての報道が比較的目立たない点が気になる。政府案は、人権保護の観点から疑問が残るものであり、注視が必要だ。
共謀罪とは「犯罪を実行しようという意思の合致」で成立する犯罪。通常は犯罪が成立するには何らかの実行行為が必要だが、共謀罪はそれがなくても罰せられる。具体的には刑法の内乱、外患誘致、私戦陰謀、爆発物取締罰則の爆発物使用共謀罪、競馬法で定める調教師や騎手などの不正競争の共謀、国家公務員法での違法な争議行為等の共謀などがある。最近では、特定秘密保護法で共謀処罰規定が作られた。
676もの犯罪の共謀を「テロ等準備罪」に
ところがこの度、国会にかけられそうなのは、676もの犯罪の共謀を「テロ等準備罪」として処罰しうるという法案だ。その発端は2000年11月に「国際組織犯罪防止条約」が国連総会で採択されたことに始まる。日本は同年12月に同条約に署名し、2003年5月に国会で承認した。
同条約が犯罪類型とするのは、①「重大な犯罪を行うことの合意」または「組織的な犯罪集団の活動への参加」、②資金洗浄、③腐敗行為、④司法妨害で、このうち②は組織的犯罪処罰法の犯罪収益を前提犯罪の拡大で対応し、③については刑法の国外犯処罰規定を整備、④については組織的犯罪処罰法で証人等買収罪を新設することにしている。
このうち問題となるのが①の「重大な犯罪を行うことの合意」だ。
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