「共謀罪」創設なら国民が過度に監視される 警察の権力も司法取引や通信傍受で肥大化
警察の捜査では、半強制的な任意同行や強圧的な取り調べ、そして別件逮捕といった、グレーゾーン捜査が続くことになろう。すでに法律が成立しているにもかかわらず、取り調べの可視化は2019年6月まで、司法取引と刑事免責制度は2018年6月まで、施行の先送りが決まっている。それに比べて通信傍受法改正による通信傍受対象犯罪の拡大だけが2016年12月1日に早々と施行された。
司法取引(改正刑事訴訟法)とは、検察官が特定犯罪の被疑者や被告人に対して、刑事責任を軽くするまたは追及しないことを約束し、取り調べで他人の犯罪関与などについて証言させる制度である。米国の映画などで「あいつのことをしゃべれば、罪を軽くしてやる」というようなシーンを見た人も多いかもしれない。これまでは冤罪の要因になるおそれがあると、導入に反対する意見も多かった。検察官・被疑者・弁護士が協議し、合意することが条件だが、今後は警察の組織犯罪の捜査に利用される可能性がある。
かつては被疑者の取り調べで、警察官が「自白すれば、すぐ釈放する、起訴されない、刑が軽くなる」などと告げ、自白を引き出すこともあった。これは、2008年に制定された「被疑者取り調べ適正化のための監督に関する規則」で、便宜供与を禁じることになったことからも明らかだ。
また、暴力団の対立抗争事件で”手打ち”を条件に実行者と称する組員を拳銃持参で自首させ、実行を指示した幹部を見逃すといった取引も行われていたとされる。ちなみに1992年から始まった警察庁主導の拳銃摘発キャンペーン「平成の刀狩り」では、改正された銃刀法の自首減免規定(銃砲刀剣類所持等取締法)を濫用し、暴力団関係者と取引して、拳銃を駅のコインロッカーなどに入れさせ、所有者は検挙せずに拳銃だけを押収する”クビなし拳銃”の摘発も横行した。
不利益な供述を強要されないか
刑事免責制度(改正刑訴法)とは、証人がかかわった犯罪について、自己が刑事訴追を受けるとして証言を拒否するおそれがあるとき、証人に証言義務を負わせることと引き換えに、証言した内容を証人に不利益な証拠として用いないことを約束して、証言を強制する制度である。検察官の請求によって裁判所が免責を決定する。
これに対しては、憲法38条の「何人も自己に不利益な供述を強要されない」に抵触するのではないか、との素朴な疑問が湧く。この制度については、法律の字面には警察官は出てこない。が、証人が警察の留置施設に収容されている場合、警察官が司法取引と同じように、組織犯罪捜査の情報入手のための口実に利用することも考えられる。
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