海自ヘリ問題、諸悪の根源は「現場の暴走」だ 訓戒処分を受けたが、海幕長の判断は正しい

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1つ目の候補、MCH-101は海自が輸送・掃海用として使用している機体で、川崎重工がライセンス生産している。全備重量は15.6トンで、機内ペイロード6トン、キャビン容積は27.5立法メートル、武装兵士24名を運べる。懸吊重量は最大5.4トンである。機体後部にランプドアがあり、車両など大型の貨物も搭載できる。

三菱重工が米シコルスキーのヘリに改良を加えた海自哨戒ヘリ、SH-60Kをベースにした汎用型ヘリが2つ目の候補。SH-60Kはシコルスキーのオリジナル機体をベースに三菱重工が開発した機体で、全備重量は10.65トン、キャビン容積は約9立方メートル、機内ペイロード1.2トン、武装兵士11名が搭乗でき、最大懸吊重量が3.6トンとなっている。

3つ目はNH90だ。この機体はユーロコプター、アグスタウェストランド、フォッカーが設立したNHインダストリーが製造しており、全備重量が10.6トン、機内ペイロード2.5トンを搭載、懸吊貨物は4トンである。キャビン容積は14.9立方メートル、ハイキャビン型ならば17・6立方メートルで、ほぼ機体規模が同じUH-60よりも大きい。搭載兵員20名である。ランプドアを装備しているので大型の貨物も搭載できる。

日本におけるNH90のマーケティングはエアバスヘリが担当しているが、同社は以前参加した航空自衛隊の救難ヘリ選定の公平性に疑問を持ち、この競争入札を辞退した。このためMCH-101とSH-60K改良型の一騎打ちとなった。

仕様をSH-60Kが入札できるように変更

哨戒ヘリコプターSH-60K(写真:tsukumocchi / PIXTA)

ところが仕様決定の段階で、SH-60Kに有利なように仕様が歪められた。まず、救難できる人員が15名から12名に減らされた。救難ヘリは荒れた海でも活動する必要があるが、救難時の海の荒れ具合を示すシーステートも6から2に下げられた。当初はMCH-101のローターブレードが輸送できることも条件として挙げられていたが、これも削られた。ランプドアを持たず、キャビンが狭いSH-60Kには不可能だからだろう。つまり輸送と救難のどちらの任務でもSH-60Kに利するように「改悪」されていたのだ。

2015年3月26日、武居海幕長(当時)は仕様が変えられたとの報告を初めて受ける。これを受けて武居海幕長はSH-60Kへの偏重を見直すように指導(防衛監察本部によると「不当な圧力」)した。

その後、内局も含めた課長級会議が6回ほど行われたが、特に武居海幕長の指導による仕様変更にも大きな異論は出なかったという。もし海幕長の指導に異議があるのであれば、これらの会議で述べればよかっただろう。だが、そうではなく、防衛監察本部に「密告」が入ったのだ。

その課長級会議では、内局からSH-60K の採用を強く援護する意見が出た。その主張には2つの理由があった。

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