トランプ就任演説は「超絶暗い世界観」の塊だ 民主主義という言葉は1度も出てこず

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筆者は、これまでもトランプの重要な言動については、米メディアでどのように報じられているのかを注目してきた。従来は、主要メディアがトランプに批判的な一方で、そのほかのメディアの反応は賛否両論という構図だった。ところが今回の就任演説については、少なくとも極めて高く評価する記事を発見するのは困難だった。

勝利演説では自ら「すべてのアメリカ国民の大統領」(”President for All Americans”)と宣言しながら、その後の政権移行期間中にそのキャスティングを演じ切れなかったツケがここで回ってきた印象である。

「政権移行期間中の次期大統領としての好感度」が40%と、近年の大統領では極めて低評価を受けてきたなかで、米国の大統領就任演説という「晴れ舞台」において、予備選挙期間中にとどめておくべき表現を使わざるを得なかったことに筆者はトランプの余裕のなさを感じた。

 トランプにハネムーン期間はない

米国では就任100日間は、新大統領には「紳士協定」として批判を遠慮しておくという慣習がある。もっとも、演説後のメディアでの反応を見ると、「トランプにはこのハネムーン期間は与えられない」とする厳しい意見も少なくない。

米国の議会3大誌の1つである『ロールコール』誌は演説後に、「トランプの就任演説が歴史に残るものになるかどうかはまだわからない。ただ明白なのは、このタイミングが米国の大きなターニングポイントになるということだ」と伝えている。

トランプは、2年後の中間選挙までに、雇用創出や成長率の上昇などの成果を出すしかない状況にさらに追い込まれた。コアな支持層であるほど成果には敏感だろう。トランプ政権が早期に米国内で成果を上げ、そのうえで海外とも価値を共創することにも専念するようになることを期待したい。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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