トランプ就任演説は「超絶暗い世界観」の塊だ 民主主義という言葉は1度も出てこず

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ここでトランプは、「アメリカの殺伐」(“American Carnage”、殺戮(さつりく)のあとの惨状)という過激な表現を使った。「母親と子どもたちは貧困にあえぎ、国中に、さびついた工場が墓石のように散らばっています。教育は金がかかり、若く輝かしい生徒たちは知識を得られていません。そして犯罪やギャング、薬物があまりに多くの命を奪い、可能性を奪っています。このアメリカの殺戮は、今、ここで、終わります」。

このように過去は「殺伐」の状況であったが、これからは明るい未来が訪れるという比喩として使ったのだ。大統領の就任演説において、過去・現在・未来のストーリー展開、暗い過去から明るい未来へのストーリー展開は常套手段だが、今回はあまりにも過激だった。「独裁者」が使う「黙示録的な悲惨な状況から困難を克服していくストーリー」のようなダークなイメージのあるものだった。

 米国民はそこまで過激な歴史観はない

実際に、米国メディアの反応を見ると、「米国民はそこまでの過激な歴史観や世界観はもっておらず、現在以降のことを言っているわけではないのにあまりにも暗い」、「トランプに反対票を投じた有権者の共感は低い」といったような批判を浴びる部分となったようだ。この表現をタイトルとした記事も少なくなかった。

ビッグで人を鼓舞するような「現実的なビジョン」を示す

先の記事では、「できるだけ壮大なビジョンであると同時に、多くの国民も自ら参加したいと思えるような現実的なものになっているか」が重要になると指摘した。分断された国民を結束させていくには、対立構造を描くよりも、「共通のビジョン」を国民が持つことの方が効果的だからである。

実際に就任演説でトランプは、「私たちは大きく考え、大きな夢を見るべきです」と語ったほか、「ニュー・ミレニアム」(新世紀)というビジョンを示すような言葉も使った。しかし、その内容としては、「宇宙の謎を解き明かし、地球から病をなくし、明日のエネルギー、産業、技術をさらに発展させる」という抽象的な表現にとどまった。

「私たちは大きく考え、大きな夢を見るべきです」と自らが語っている米国大統領の「夢」としては、「ビッグで人を鼓舞する」と「現実的である」という両面において失望感は大きかったのではないだろうか。

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