日本人はこの国の真の価値に気付いていない ニューヨークの漫画家が感じる日本の強み

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また、漫画家でやっていくための作戦として、自分の見た目も変えました。競争が厳しいニューヨークでやっていくためには、強い個性が必要です。黒くて長い髪と黒縁のメガネで、「漫画に出てきそうなキャラ」で勝負していこうって決めたの。ニューヨークでは「ジャパニーズガール」であることと、「漫画家キャラ」の2つが、ミサコ・ロックスのトレードマークであり、そのことが私の描く作品を後押ししてくれています。ニューヨークでは待っているだけじゃ始まらない。どんなにいい作品を描いても、出版してもらって、宣伝してもらって、書店に置いてもらわないと読者に届かない。そのためには自分自身も積極的にアピールしていかないとね。

モチベーショナルスピーカーというもう1つの柱

――漫画家の仕事とは別に、モチベーショナルスピーカーの仕事もされていますよね。モチベーショナルスピーカーって日本ではあまり聞かない職業なのですが、いったいどんな仕事なのでしょうか。

メトロポリタン美術館にて

モチベーショナルスピーカーとは、全米の学校によく訪れるスピーカーの事です。彼らは波乱万丈な人生を送ったり、はたまた更生した人達が多いです。彼らの経験を元にして、生徒達に勇気やチャレンジ精神も持ってもらうためにスピーチをします。

私の場合は、日本人として一人でアメリカに渡米し学生時代から仕事を続ける中で、どうやってさまざまな葛藤や障害にも負けずに前に進んでいるか、そしてアメリカ人に負けないで戦っているのかをスライドショーを使いながら話します。アメリカはインターナショナルな国だから、こうして比較文化を出来るスピーカーも好まれるので、小中高校、大学でもスピーチをしています。メトロポリタン美術館とプリンストン大学では講演だけでなく漫画教室も実施してますが、どちらもとても好評でした。

――波瀾万丈な人生を乗り越える強さや力は、いったいどこから生まれているのでしょうか。

私がなぜ、いろいろなことに勇気を持ってチャレンジできるかというと、私が17歳のときに幼なじみが急死したことが影響しています。今まで目の前にいた子が突然、いなくなってしまうという体験はかなりショックでした。今、こうやって生きているだけでもありがたいことで、やりたいことが一つでもあったらチャレンジしないともったいないって思ったの。

その後、アメリカに来てからなのですが、私のいとこが40歳の時に事故で亡くなってしまったことも影響しています。日本とアメリカで遠く離れていても、応援してくれている親戚がいるってすごくうれしかったんですよ。それからは、亡くなった彼の分までがんばらないといけないって、彼の死が私の活力になっています。悲しみはエネルギーに変化してくれて、私の背中を強く押してくれていると思っています。私は身近な人の死を若い頃から経験して「明日があるとは限らない」って思えたことが、迷ったら一歩踏み出してみる、後悔するよりチャレンジしてみる、というミサコ・ロックスを作ってくれているのだと思います。

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