トランプの最強交渉テクニックに気を付けろ 日本政府・企業はどう向き合うべきなのか

✎ 1〜 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 56 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

③ ウソ(lie)ではなくハッタリ(bluff)

トランプはどうして、あれほど簡単に真実ではないでまかせをポンポンと口にするのかずっと解せずにいたが、これも「ディーラー」ならではの考えと理解すれば納得がいく。彼の頭の中では、ウソではないのだ。交渉を有利に進めるためには、いくらでも自分の言い分を変えるし、大げさなことも言う。まったく何も手を付けていないカジノ建設現場で交渉相手からいい条件を引き出すために、「すでに着工している」とウソをつき、その相手が見学に来ることになって、慌てて重機などを手配し、現場を走りまわさせたという逸話もある。

本当は買いたくて仕方ないのに、「まったく価値はない」と思わせるように、不利な条件を並べて、安く買いたたく。イデオロギーよりも主義主張よりも、重要なのは眼前にあるディールに勝つこと。そのための条件を引き出すためにはどんなに適当なことを言っても正当化できると思っているフシがある。

「恋愛と戦争では手段を選ばない」ということわざがあるが、彼にとっては、ディールはどのような手段も正当化される「戦争」のようなものなのかもしれない。「大きく考える人を見ると興奮する。だからある程度の誇張は望ましい。……私はこれを真実の誇張と呼ぶ。これは罪のないホラであり、極めて効果的な宣伝方法である」。真実とウソの境目がとことんぼやけているのは彼のこうした考え方ゆえなのだ。

ロシアや台湾にすり寄る理由は?

④ オルタナティブを用意する

なんでロシアや台湾にすり寄るのか。実は、これも交渉のテクニックの1つとも考えられる。たとえば、物件を売りたいと考えるとき、買いたいという業者が多いほうが値段は吊り上げられる。オルタナティブ、つまり代替の選択肢をより多く用意しておけば、お互いを競わせてよりよい条件を持ってこさせることにもなるし、交渉に優位に立てるということだ。

地政学的に見ればありえない選択肢でも、ビジネスの単なる取引としてなら、考えられないことはない。「あそこが買いたがっているのだ」とささやけば、それがウソでも、必死に価格を上乗せしてくるだろう。そうやって疑心暗鬼にさせることで、こちらのペースで進められる。「ほかに選択肢がない」ことを感じ取らせ、必死感を見せる取引が最も勝ち目がないわけで、こちらにはオプションはいろいろあって、余裕があるのだ、と見せることで、自陣を有利に見せる「レバレッジ」(テコの効果)が効く。

次ページ徹底的に戦う
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事