⑤ 徹底的に戦う
トランプは徹頭徹尾、ファイターだ。つねに強気で、時に脅し、謝らないし、執念深いし、敵対する相手は容赦なく攻撃する。批判記事を書いたメディア記者には抗議文を送り付け、いかなる非難に対しても、攻撃し返さないではいられない。「不公平な扱いや不法な処遇を受けたり、不当に利用されそうになったときには徹底的に戦うのが私の信条」と言い切り、「目には目を、歯には歯を」を辞さないのがトランプスタイルらしい。
「小学生のときから自己主張の強い攻撃的な子供で、2年生のとき、音楽の先生の目に青あざをこしらえた」。そして、ミリタリーアカデミーでの中高生活で、その攻撃性を建設的に使うことを学んだ。「ライオンの調教師のように、ムチを鳴らし、威厳を見せて歩けばライオンは言いなりになる。弱さやおびえを見せれば、ライオンはたちまち襲い掛かる」というように、弱さを見せることがとにかく嫌なのだ。
トランプの日本人評
そのほかにも、物事を極端に単純化して見せて相手を攪乱したり、交渉相手の内部で、仲たがいさせて、その混乱に乗じたり、第三者を交渉に連れ込んできて、プレッシャーを与えたりと、ブラック交渉テクニックは山とある。こうやって、ブルドーザーのように突き進んできたトランプは敵も大勢作ってきた。これまで4095件の訴訟に巻き込まれ、6件の倒産も経験している。
希代のディールメーカーと対峙するのは、ハードなネゴシエーションの知見があまりない日本企業としては、容易ではないかもしれない。「日本人は非常に商売のやりにくい相手だ。まず、大人数のグループでやってくる。話をまとめるのに全員を説得しなければならない。めったに笑顔を見せないし、真面目一点張りなので、取引をしても楽しくない」。これがトランプの日本人評だ。また、「何十年もの間、主として利己的な貿易政策でアメリカを圧迫することによって、富を蓄えてきた」とも言っている。1987年に出版された本での所見であるが、こうした印象が根強く残っている可能性もある。
日本の企業、そして日本政府はこうしたテクニック、心証を十分に見抜いたうえで、堂々とそして狡猾に渡り合っていかなければならないということだろう。
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