「昨年は担担麺とアラカルトメニューしか触れられなかったのですが、今年は醤油ラーメンの話を聞かせてほしいと言われました。昨年からは特に変えていないのですが、醤油も評価されたのはとても嬉しかったですね」
開店時から待ち続けた結果がミシュラン一つ星だった。「味は良くても立地が悪ければお客さんは入らない」という飲食店の常識を見事に覆した。自分の味を信じて、地道に努力した結果である。
一つ星を獲得し、今後の目標はあるのか?
「今は一店舗で精一杯。生涯職人を目指したいので、独立志願の弟子を受け入れてノウハウを教えてあげることで美味しいお店が増えていけばいいなと思います。師匠が自分にしてくれたことを自分もしていきたいです」
弟子を育てて、その後お店を任せて経営者として歩むという道もあるが、美味しいラーメンを生涯作っていたいというのもラーメン店主の夢なのだと思う。
「1000円の壁」にどう挑む?
ミシュランを獲ったラーメンの今後として、「1000円の壁」という課題もある。心理的に1000円を超えるか超えないかは、いくら美味しくても食べ手が本当に高いと感じる可能性があり、ラーメン店主は常にそこに悩んでいる。ただ味を追求していく中で、1000円以内だとどうしても素材など妥協せざるを得ない部分が出てくる。
鳴龍のラーメンは1000円を超えていくのか?
「迷っています。このままではラーメン屋さんに夢がないなぁと思います。1000円を超えれば原価もかけられるし、従業員にも十分な給料を払えるようになります。ただ、地元のお客さんに支えられてきた歴史もあるので、週に1回、2回と手軽に食べていただけるような価格であり続けるべきだとも思っています。しばらくのテーマですね」
使いたい食材はまだまだたくさんあるそう。今は1店舗で精一杯だが、いつか1000円のラーメンを作れる舞台があれば、という話もされていた。
1000円の壁については、ラーメンという食べ物自体の問題もある。例えばランチで1000円となると、会話を楽しみながら1時間ぐらいはかけてゆっくり食べたいもの。回転が命のラーメン店では少し難しい部分が大きいだろう。そば業界に高級そば屋と立ち食いそば屋があるように、ラーメン業界にもそういった区分が必要なのかもしれない。
今年のミシュランが取材をした「醤油拉麺」をいただいた。丸鶏、モミジを主体としたスープにカキのコクをプラス。醤油はまろやかだがキレがしっかりあって、スープと合わさると凄い厚みと旨味だ。チャーシューは肉の旨味ギッシリのロースと脂までが美味しいバラの2種類。麺はツルツルで全粒粉の入った自家製麺で、スープをこれでもかと持ち上げる。麺はメニューごとに使い分けるこだわりようだ。
ミシュラン獲得は道の途中にすぎない。
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