ミシュラン「一つ星」獲ったラーメン店の真実 東京・大塚「鳴龍」の一体何が評価されたのか

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店主の齋藤一将さんは料理専門学校を卒業後、ホテルの中華部門で9年間腕を振るってきた。その中で「自分の店を持ちたい」という思いから、特に麺好きだったこともありラーメンの道を志す。せっかくなら製麺も学びたいという思いもあり、29歳で名店「柳麺 ちゃぶ屋」の門を叩く。店主・森住康二氏からラーメン作りを学び、その後同グループの「表参道MIST」で3年、「香港MIST」で1年9カ月、料理長にまで上り詰めた。

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実は齋藤さんの在籍していた「香港MIST」はミシュラン一つ星を獲得している。この時は「和食部門」の獲得だ。

その後、独立した齋藤さんは、2012年5月、東京・大塚の地に「創作麺工房 鳴龍」をオープンさせた。路地裏という決していい立地とは言えない場所。渋谷、池袋、新宿といったターミナル駅ではなく、なぜここだったのか。

大きすぎる駅の近くは家賃が高い

「大きすぎる駅の近くはどうしても家賃が高く、原価がかけられないんです。せめて山手線内でと思い、大塚に決めました」

店主の齊藤さんはホテルの中華部門で腕を磨いた(写真:筆者撮影)

美味しくても立地が悪くて閉店してしまったというラーメン店は本当に多い。私もここはなかなか場所が覚えられず、いまだに地図アプリを使わないと着けない。

そんな鳴龍はまず1日80食を目標にスタートした。ところが、立地条件もありなかなか客足は伸びず、1年目は目標に届かない大赤字。それでも齊藤さんは自分のラーメンに自信を持ち、じっと耐えた。

私は開店翌年の2013年1月に初めて鳴龍を訪れ、「担担麵」をいただいている。サラッとしているのだが十分なコクとゴマ感がたまらない一杯で、スープ、醤油、ラー油など全てに手が込んだ本当に美味しい担担麵だ。この頃から「大塚なら鳴龍」と周りに薦め始めるようになった。

1年目は苦戦を強いられた鳴龍だが、口コミが広がり年を追うごとに90食、100食、120食、、、と毎年徐々に売り上げが伸びていく。そんな中、ミシュランガイドにラーメン部門が新設。師匠や仲間のお店がビブグルマンを獲得する中、「鳴龍」には受賞の声が掛からなかった。

「寂しかったです。ミシュランを特別意識するつもりはなかったけど、これをきっかけにおのずと意識し始めたのかもしれません」(齊藤さん)。2015年からスープをリニューアルして、自分だけにしか作れないラーメンを目指し始めた。今まで作ってきたものをベースにミリ単位で調整をしていく。そして、ミシュランガイド東京2016でビブグルマン、2017で一つ星を獲得する。

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