「EU崩壊」などは近視眼的な妄想に過ぎない ヨーロッパは昔からいつもたいへんだった

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来年はEU(欧州連合)主要国で選挙が相次ぐ。3月にはオランダで、秋にはドイツで総選挙。4~5月にフランス大統領選挙がある。小国は経済依存度が高く、ユーロやEUを離脱するのは無理、問題は大国だが、フランスがEUの将来にとって一番重要だ。

フランスでは共和党(中道右派)の大統領候補にフィヨン氏(サルコジ大統領時代の首相)が選ばれた。社会党ではオランド大統領が低支持率のため立候補を断念したが、社会党自体の支持率も低い。5月の大統領選決選投票ではフィヨン氏と極右政党である国民戦線のルペン党首の一騎打ちになるという予想が多い。

フランス国民のユーロ支持率は高い

ルペン氏の主張は、EUから権限を取り戻し、難民や移民などの侵入からフランスを守る、そのためにはEU離脱が必要、というものだ。ドイツに都合よく作られたユーロ圏でフランスは競争力を失っているので、ユーロを離脱する、ということも視野に入れている。

だが、フランス経済のEU・ユーロ圏依存度は非常に高く、仏企業はグローバル化・EU化しているで、EU離脱もユーロ離脱も経済的に無理だ。EUのグローバリズムからフランス労働者を守るというルペン氏の意志は尊いが、EUの中で実現するべきだ。

フランス国民の通貨・ユーロへの支持率は高い。ユーロはすでに人々が生きていくインフラになっている。イタリアもフランスと事情は同じだ。英国が離脱できたのはユーロ圏に入っていなかったからだ、ということもできよう。

心配な点はフィヨン氏の選挙公約が、サルコジ元大統領に似た新自由主義政策である点だ。解雇の容易化、週35時間労働の規制廃止(延長)、公務員の50万人削減と労働時間の週39時間への引き上げ、年金支給年齢の65歳への引き上げ、などで、労働者の大反対を受けそうな項目がずらりと並んでいる。ルペン氏に足をすくわれないで頑張れるだろうか。

秋のドイツ総選挙ではメルケル首相4選の可能性が高いだろう。2015年の難民大量流入への積極的な受け入れ対応は結果的にやりすぎとなり、メルケル首相への批判の声は高まった。だが、ドイツの人口は現在の8300万人から2060年には7000万人まで減少するとの予測が出ている。ドイツの大企業は労働人口減少に強い危機感を持っており、それがメルケルの難民受け入れ宣言につながった。さすがに、前回2012年選挙ほどの強さはないが、社会民主党は凋落し、他の政党にもメルケル首相に対抗できるようなリーダーがいない。

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