「いじめによる自殺」への残念な対応の実態 子どもたちの苦しみは理解されているのか
少しでも内容を知りたいと里美さんは情報公開請求をした。すると今度は、調査委の資料だけでなく、生徒の「交友関係」を示した資料も、「調査の争点」との理由で、黒塗りだった。わかったのは、亡くなった9月だけでも4回、保健室に行っていたということだけ。
その後、都教委と交渉した結果、調査の一部は開示されたのだが、いじめの有無、他の生徒との関係、将来の進路に関する悩みなどについても知らされることはなかった。
里美さんは「調査内容は形式的なことしか教えてもらえず、資料も黒塗りでは何が書いてあるかわからない。親の知る権利を侵害しているのではないでしょうか」と語る。
都教委の担当者に問い合わせると「遺族に納得してもらえてないことはわかっています」としながらも、「事実を調べ尽くしたというところまで調査します」と回答。
しかし、『いじめ防止対策推進法』の立法者で民進党の小西洋之参議院議員によると、
「学校や教育委員会は調査内容を被害者家族の方々に説明する責任があると法律で義務づけられています。学校や団体が“調査中だから説明できない”というのは本末転倒ですし、まことに遺憾です。誰よりもお子さんを大切に思う親御さんに説明することが委員会の役目なので“説明できることから逐一してください”と常に伝えています」
法律で定められているはずの調査報告をしないのなら、被害者側が怒るのも当然だ。
「市教委の対応にはバカにされていると感じた」
2013年11月、神奈川県相模原市内の中学2年生(当時)の横山徹くんが自殺を図り、搬送先の病院で息を引き取った。
徹くんは発達障害(アスペルガー症候群)と診断され、友人とのコミュニケーションが得意ではない子だった。
「小学生のころからいじめを受けていました。相性がよい子と悪い子の差がありました」(母親の祐巳さん)
自殺当日の夕方、妹の樹里さんが徹くんに用事があって部屋に行くと、自殺を図ったところを発見。すぐに救急車を呼んでその際は一命を取りとめたものの、10日後に病院で死亡が確認された。
「学校でのいじめか、その対応が理由なのかと思っていました。それがなければ死を選ばないと思います。家では自傷行為もしませんし、まさか、自分の子どもが自殺するなんて……」(前出・祐巳さん)