「いじめによる自殺」への残念な対応の実態 子どもたちの苦しみは理解されているのか
当初から祐巳さんは学校側に「自殺の背景調査をしてほしい」と訴えていたが、学校や市教委は、調査を渋った。調査委設置を希望した際にも不満が残った。祐巳さんは「遺族推薦の調査メンバーを入れてほしい」と希望したのだが、相模原市の市教委からは「中立公正でなくなる」と断られたという。その後に調査委が設置されるが、生徒へのアンケート調査も行われない日々が続いたという。
「2年生の終わりごろ“きちんと調査をしてほしい”と言っても、なかなか動いてくれませんでした。結局、卒業間近にアンケートをすることになったのです」
アンケート調査の動き始めも遅く、しかも同じクラスと部活のメンバーに限定。
「学校でも市教委でも、重大事案と認識していませんでした。そのため、当初は教員に対する聞き取りだけ。市教委の対応にはバカにされていると感じました」
「子どもがどれだけ苦しんでいるか理解しているのか」
同じ相模原市で2015年9月のある夜、小学4年生(当時)の渡辺春樹くんが自殺を試みようとした。たまたま通りかかった警察官に保護されたのは幸運だったのだが―。
家を飛び出て行く直前、春樹くんは「しにたい」などとメモを書き残す。実はその数日前、日記にこう書いていた。
《何でいじめはなくならないのですか? ぼくをいじめる〇〇に消えてほしいです。みんなが消えないなら、僕がしにたいです》
警察に保護されて8日後、学校側が家庭訪問に訪れた際に、父親の慎也さんは思いの丈をぶつけた。
「1年生のときもいじめを受けていて、当時からの学校対応の悪さを考えれば、怒らない父親はいないと思います。子どもがどれだけ苦しんでいるのか理解しているのか」