日本株は「イタリアリスク」を無視している 「トランプ相場」は転換点に差し掛かっている

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これらを整理すると、

「OPEC総会で減産合意の具体案決定」+「堅調な米経済指標」=「日米株高、円安ドル高」

となるだろう。ポジティブな想定では、ドル円は115円、日経平均は1万8500円-1万8600円といった水準感だろうか。

しかし、12月4日のイタリア国民投票、オーストリアのやり直し大統領選挙が控えている以上、ここからの楽観ムードは高まりにくそうだ。イタリアの憲法改正の是非を問う国民投票の結果「否決」となれば、同国のレンツィ政権は退陣する公算が大きい。また、オーストリアでは、与党が支援する左派候補を極右候補が下すかもしれない。

欧州の政治リスクがトランプラリーの転換点となるか

今回のイタリア、オーストリアの政治イベントは、6月の英国による欧州連合(EU)からの離脱を決めた国民投票や、11月のトランプ次期米大統領の誕生と似たようなインパクトを市場にもたらす可能性があり、市場の警戒要因とされる。

もし欧州で極右もしくは反EU体制の流れが強まると、来年5月のフランス大統領選や同9月のドイツ議会選に飛び火し、欧州の相次ぐ政治リスクでユーロ売りが強まると指摘する声も聞かれる。

フランスのオランド政権は、頻発するテロや景気低迷で2期目を目指して出馬する可能性は低いと言われ、共和党候補か右派の国民戦線の候補かいずれかの選択になる様子だ。フランスでは国民の45%がEU離脱の是非を問う国民投票の実施に賛成、と地元メディアが6月時点で伝えており、今後が注目される。

ドイツでもメルケル首相が早々に4選挑戦を明言したが、移民問題は根深い。EUを支えるドイツ、フランスの政治的なリスクの高まりは、14年ぶりの1ユーロ=1ドル(パリティ)割れを誘発する可能性がある。

2008年のリーマンショック発生後、欧州では、債務問題、ギリシャ問題、ドイツ銀行財務悪化問題など、ほぼ毎年ネガティブなイベントが発生している。週末のイタリア、オーストリアの政治イベントが、トランプラリーの重要な転換点となるだろう。
 

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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