米国製「ルンバ」に日本勢が勝てないワケ アイロボット社、最高技術責任者に聞く

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――ロボットの可能性という意味では、日本では昨今、介護ロボットに注目が集まっています。

日本や欧米で高齢化が進む中、高齢者が家の中で独立した生活を長く維持できるよう支援するロボットが求められています。非常に大きなニーズがある。開発側にしてみても、目標は皆同じでしょう。ただ、問題をすべて解決できるロボットをすぐには作れない。多くの技術がもっと開発されるべき段階であり、一つ一つのステップを踏んでいく必要があります。

われわれにとって、「ルンバ」はそれに向けた第1段階だと考えています。背中が痛かったり、歩行がむずかしかったりして掃除に難のある高齢者にも好評です。最近、病院向けに遠隔診断等を行うビデオ会議システムを搭載したロボット「RPヴィータ」を開発しました。これが次のステップ。離れた場所にいる人々をつなぐことを可能にしましたが、技術が成熟すれば病院だけでなくもっと家庭の中に入り込んでいくでしょう。孤独という問題は高齢者にとって深刻です。

われわれは常に「持続可能で利益を生み出せるビジネスを育て、次のステップにつなげる」ということを念頭に事業を行っています。「ルンバ」のヒットにより、次なる生活支援ロボットの開発に専念できるわけです。

成功に必要な構成要素を見極め、計画的に段階を踏みながら、利益の出るビジネスを生み出していく。それが無理なら撤退するしかないということでしょう。加えて重要なのが、信頼してもらえる「ブランド」を築くことです。「自分の祖父母の面倒をロボットに見てもらいたい」と感じてもらうには信頼されるものである必要があります。

有望技術も使い方次第

――日本でロボット産業が育つために必要なことは何でしょうか。

有望な技術はたくさんあります。しかし企業はその技術をどう市場に出していくか、方法を見定めなければなりません。そうでなければ、単に「クール」な技術ということで終わってしまいます。

(これは日本で好まれる例ではありませんが・・・、)韓国はこの7~8年でロボットに関する技術やノウハウを熱心に磨いてきました。カギとなったのは、単に政府が資金提供などをしただけでなく、研究機関が作られ、企業が互いに技術を統合し製品化につなげる。そして、市場からの反応を企業にフィードバックして、改善を重ねてきたという活動です。こうしたフィードバックのループこそ、日本の技術や専門性をビジネス的な成功に昇華させるうえで不可欠だと思います。

大企業をしのぐほどの新しい企業がでてくることも重要になるでしょう。現在のスマートフォンもそうですよね。従来型携帯で世界トップだったノキアは、それまで携帯電話と無縁だったアップルの「アイフォーン(iPhone)」の前に崩れました。何に注力するのかはっきりさせ、ミッションに専念することが重要です。われわれアイロボットにとっては、それがロボット。市場の可能性を信じ、事業を続けていきます。

(撮影:尾形 文繁)
 

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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