「トランプ化した米国」を理解するための6冊 大国はなぜ分裂してしまったのか
『綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語」、ジョージ・パッカー著(NHK出版)
ドナルド・トランプを選んだ米国を、最も上手く説明している本が3年以上前に出版されていたなんて信じられるだろうか。『綻びゆくアメリカ』で、ジョージ・パッカーはこの国の制度や歴史的慣習を幅広い視点で観察し、自らの調査結果に愕然としている。この本はホラー小説のように始まるが、ある意味ホラー小説そのものだと言えなくもない。「いつアメリカが綻び始めたか誰も知らない」と、パッカーは書く。「アメリカ人を1つにしていた、安全で時折息の詰まるような絆はいつ崩れ始めたのか」。
サム・ウォルトン、オプラ・ウィンフリー、エリザベス・ウォーレン、ニュート・ギングリッチといったさまざまな人物の紹介と省察がそれに続く。1980年台後半に米下院議長に就任した頃のギングリッチの話し方が、選出された指導者たちの話し方をどう変えたかパッカーは描写する。「ギングリッチは彼らにマスタードガスを与え、彼らは考えうる限りの敵すべてにそれを使ったのだ。ギングリッチ自身も含め」。この本は悲しみ、憤りと同情に溢れている。
ティーパーティの不満に迫る
『STRANGERS IN THEIR OWN LAND: Anger and Mourning on the American Right』(未訳)、アーリー・ラッセル・ホックシールド著(ニュースプレス)
全米図書賞のファイナリストに選ばれたこのノンフィクションで、ホックシールドはルイジアナ州のティーパーティ(保守系の市民活動)支持者を仔細に観察する。ジェイソン・デパールはニューヨーク・タイムズの書評欄にこう書いた。