米国自動車市場を襲うトランプリスクの暗雲 日系メーカーは「米国一本足」で大丈夫か

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よりインパクトが大きくなりそうなのが、日系メーカーの屋台骨、米国の変調だ。これまで好調だった米国市場だが、10月の新車販売台数は前年同月比5.8%減の約137万台と、3カ月連続の前年割れとなった。中でも厳しいのが中小型セダンだ。トヨタは前年同月比8.7%減となり、看板車種「カムリ」が15%減、さらにハイブリッド車「プリウス」は約半減に落ち込んだ。

決算会見でトヨタの伊地知隆彦副社長は米国市場について、「やや弱含みだ。今後の動向は注意深く見守る必要がある」と指摘。今期の北米販売計画を6万台ほど下方修正した。前期比で増やす計画が一転し、減少する見通しだ。

米国を中心に今上期の販売が好調だった日産でも先行きの不安が垣間見える。米調査会社オートデータによれば、値下げの原資となる販売奨励金(インセンティブ)が、日産では10月に1台当たり4236ドルとこの1年で2割上昇し、業界平均を2割も上回った。

日本勢は需要の変化に追いつけず

同社の北米販売は上期に前年同期比で5.4%伸びたが、地域別の営業利益は27%も減少。為替の影響もあるが、奨励金の上昇が響いたことは否めない。競争が激しくなる中、台数確保のために一定程度の収益を犠牲にしたといえる。

背景には人気車種の交代がある。米国では原油安を受け、日系が得意なセダンなどの乗用車が落ち込む一方、SUV(スポーツ多目的車)やピックアップトラックなどの小型トラックが伸びている。

トヨタの伊地知副社長は「米国市場は(前年に比べ)60万台規模で乗用車が減り、その分トラックが増えている。市場が縮んだ乗用車セグメントでは熾烈な競争がある」と認める。ホンダが2015年11月に発売して販売好調なセダン「シビック」など一部車種を除き、奨励金がかさみやすい。

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