米国自動車市場を襲うトランプリスクの暗雲 日系メーカーは「米国一本足」で大丈夫か
こうした中、日系各社も生産の大型車シフトを急ぐ。トヨタはメキシコ北部の工場に1.5億ドルを投じ、2017年末をメドにピックアップトラック「タコマ」の生産能力を6割増やし年間16万台にする。
一方でプリウスは増産計画を凍結する。2015年末に全面改良したばかりだが、2016年1~10月の米国販売は前年同期に比べ約3割減。国内の堤工場に加え、年内に高岡工場でも生産する計画だったが、代わりに米国で人気のSUV「RAV4」を生産する予定だ。
日産もこの下期は、上期に投入した新型車に加え、売れ筋のSUV「ローグ」(日本名「エクストレイル」)の商品改良などで販売増を狙う。ホンダは米インディアナ工場で、シビックに加えSUV「CRーV」の生産を始める。
トランプ当選でリスクは一層高まる
ただ、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「買い換え需要の一巡で小型トラック人気もピークに達しつつある。日系各社はトラックの商品投入や能力増強のタイミングが遅かった」と指摘する。低金利と消費者の旺盛な購買意欲を支えに米国市場全体は年間1740万台レベルと高水準だが、足元では減速感が強まっている。ピークアウトが近いとの声は多い。
そして11月8日に行われた米大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が選出された。同氏はドル安政策の推進を掲げる。今後さらに円高が進めば日系メーカーの輸出採算が悪化しかねない。また自国産業を保護する姿勢も明確であり、米国での事業環境は一層不透明感が増すとみられる。
2008年のリーマンショックを境に、日系各社は軸となる販売地域を広げるべく努めてきた。だが結局米国頼みなのは変わっていない。「米国一本足打法」のリスクがあらためて突き付けられている。
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