かつて世界のソーラー市場は日本のメーカーがリードしていた。2004年ごろには日本のソーラーメーカーが世界の半分以上のシェアを占めていたが、2010年にはわずか9%にまで落ち込んでいる。当初はソーラー発電に関する日本政府の普及政策は世界をリードしていたからシャープや京セラは世界でナンバーワンのソーラーメーカーに成長した。もしもブレのないソーラーの普及政策を続けていれば、日本メーカーがソーラー事業でもっと早く技術的な成功を収めていただろう。経産省資源エネ庁の方針の誤りはやはり原子力発電を優先したために再生可能エネルギーの開発策に手を打つチャンスを逃したことと言えるだろう。
日の丸ソーラー産業がとるべき戦略とは?
一方、中国は徹底した政府のバックアップでソーラー政策の後押しをして世界一の地位を築いた。中国の躍進で誰でも参入できるソーラー産業の戦国地図が出来上がったのだ。今後もソーラー分野のグローバル化が進むことが予想される。たとえば韓国の大手ハンファグループにドイツの太陽電池セル大手Q-cellsが買収された。
これらの韓国や台湾メーカーも日本で急拡大を見せる太陽電池産業に対し、(半導体などのOEMで高い技術力を養った企業が)日本企業と積極的に販売提携していくと予見される。ソーラー発電も半導体のひとつだが、民生用の半導体に比べて、より単純な構造であるため、製造しやすく、参入ハードルも低く誰にでも参入が可能だから、今後ともソーラーパネルのコモディティ化が進み世界的な価格破壊が進むことが予想される。
一方、米中のAD(アンチダンピング)問題は、ますます激しくなるばかりだ。中国のソーラー産業はこれまでも対外輸出に依存してきたが、AD問題によって、ここにきて輸出先をなくしてしまったため、日本市場への廉売を余儀なくされている。日本のソーラー発電の広がりは始まったばかりだから、中国のソーラー素材を安値で買ってあげても損することはない。中国は国内経済が思わしくなく、必死なのだ。日本の新エネルギー産業を加速させるためには、「漁夫の利」でも何でも、利用するべきだ。
日本の多くのソーラーパネルメーカーもすべて自前で生産する垂直統合型の発想から、水平分業型の事業へとシフトしていくだろう。その意味ではソーラー業界は、競争原理の中で疲弊戦を余儀なくされるだろう。ソーラー専業メーカーは市況の変化に影響を受けやすいため、経営の安定性は期待できない。一種のブームで収益が上がりやすい反面、ブームが去ると、経営悪化に陥りやすい構造になっている。
このように見てくると、日本のソーラー産業の戦略が浮き彫りになってくる。ソーラーセルは中国の優位性を生かして中国製を利用すればよい。中国製のシリコンの品質も向上したから、多少の変換効率の低下を気にすることはない。それよりも、日本はCIGSやCdTeやGaAsの技術をさらに発展させ、革新していけばよいのだ。素材やデバイスは日本で研究開発を進めて、アセンブル(組み立て)は海外にシフトしていくのが、自然な流れだろう。
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