日の丸ソーラー産業よ,中国を使い倒してしまえ 太陽光発電は本当に儲かるのか(下)

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では、日本と中国と技術力の違いとは何だろうか? 受光体の変換効率自体には大した差はないが、周辺技術に差が出てくるといわれている。例えばPID問題だ。PID問題とは太陽電池モジュールの発電量が低下する現象だが、発電モジュールと、それを支える金属フレームの間で漏れ電流が発生し、出力の低下を招く現象が深刻な問題になっている。この電圧誘起出力低下現象を解決するのも、実は日本メーカーの得意とするところだ。要するに日本の技術には信頼性が高いのだ。

日本の強みは、ガラス技術と周辺部材の技術力

日本のソーラー技術は何も受光体だけではない。ソーラー部品のガラス分野は旭硝子や日本板硝子などの日本メーカーが強い。これらの企業はこの分野では文句なしに世界一である。ガラス基板の透明度、強度、薄さに強みがあるが三層構造になるとさらに強い。

また、そのほかの周辺部材でも日本の素材がほかのメーカーを超えているようだ。たとえばブリジストンのバックシートは世界一であるし、現在も太陽電池用接着フィルムの生産能力を2工場に増強し総投資額82億円、2012年に月産6600トン態勢になった。

パネルの構造は上からガラス、EVAフィルム、発電層、EVAフィルムそして下にバックシートが必要だが、太陽電池に使用する発電セル(シリコン・セル)を固定・保護するために、ガラスおよび裏面保護シート(バックシート)を接着させるフィルム状の膜やEVAフィルム(エチレン・ビニル・アセテート フィルム)が重要になってくる。

これらの素材が水や紫外線に強いため、屋外で使用される太陽電池用接着封止膜には最適な素材と言われている。これらのEVAフィルム市場は、三井化学ファブロ、ブリヂストン、サンビックなどが世界の大手だが、今後は年平均20~40%の拡大が予想されている。2013年にはフィルム市場は6億8000万ドルにまで発展してきたが、これからの周辺市場でも日本の優位性は持続するだろう。以上より、日本のソーラー産業の未来は明るいと言えるだろう。

再生可能エネルギーにはソーラーエネルギー以外に風力エネルギー、小型揚水エネルギー、地熱エネルギー、潮力エネルギー、波力エネルギー、バイオエネルギーなどがある。この中でソーラーエネルギーだけは、地球外エネルギーを取り込める再生可能エネルギーである。宇宙開発が進めば大気圏外において宇宙線を集めてエネルギーにしなければならないが、先端技術のひとつに宇宙から地球にビームでエネルギーを送る技術の研究がなされている。

半導体を利用したソーラー技術は人類の知恵の塊である。今後もエネルギーのベストミックスが研究されるが、化石燃料の枯渇の代替として、再生可能エネルギーのチャンピオンはソーラー発電がトップランナーであり続けるだろう。

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