ところが、ある時幸雄さんは、私の目の前で自分の母親に、「なぁお母さん、お母さんは弟がかわいくて、すき焼きの時は僕をドアの向こうに立たせて先に弟に肉をたっぷり食べさせて、そのあと僕を部屋に入れていたね?僕が昼寝していても、父親に似ていて憎いと言って、僕を蹴とばして通りすぎていたね?」と、言い出すのです。なんと幸雄夫人と私の前でその母親は、ウソでも弁解すると思いきや、苦笑いをしながら聞いていました。
そんな幸雄さんですから、親の面倒は弟に丸投げです。そうふるまって当然の理由があるからと、さばさばしたものです。ここで下手に、それでも親だから感謝しなくては親不孝者になるとか複雑に考えるから、ややこしいのです。親といえども場合によっては割り切りが大事です。幸雄さんは親の誕生日にも、お花一本プレゼントしませんが、堂々としています。
しがみ付かない生き方をしよう
「しがみ付かない生き方をしよう」――。これは香山リカさんの本のタイトルです。内容は読み手によって、いろいろ感想は分かれると思いますが、いい言葉だと思いました。命を賭けるほどの恋愛をしても、一方が何かの理由でノーと言えば、いくらしがみついても、それは終わりです。追えば追うほど不幸になるだけです。
それは残念なことに、親子関係でも同じだと、認めざるを得ない時代になってきました。ホームドラマに出てくる愛情に満ちた母親像を基準に、母とはこうあるべきだと願うと、しんどいことばかりです。
あなたの複雑な感情も、十分に理解できますが、あなたはこれから、育児などで忙しくなります。あなたのご性格でしたら複雑な感情も、時の経過とともに薄らいでいくケースだと想像します。母上の行為は、あなたへの可愛さ余っての大人気ない意地っ張りから始まったことと、推察するからです。
虐待した子に仕送りを無理強いする親など、もっとひどい親もいっぱいいます。あなたさえ根に持たず発想を転換すれば、考えようによってはさばさばした母娘関係に持って行くことができます。母上を恨んで生きることは、あなたにとっても良いことは何もありません。これ以上は当分は求めない、追わない路線変更をお勧めするものです。
親への感謝が足りないなんて、とんでもない。事実でないことを自分の責任にしても、何の解決にもなりません。当分は複雑に考えず割り切って、その葛藤のエネルギーもあなたの家族の、より良い幸福のために使いましょう。
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