渋澤 そう言い切れるかなあ。毎月7.5兆円規模で日銀が長期国債を買うワケでしょ。年間で90兆円。短期金融市場を中央銀行がコントロールするのはわかるんだけど、長期国債の市場まで手を広げるというのは、やはりおかしいんじゃない。日本政府に対する信認が何らかの形でなくなったら、ヘッジファンドなど外国人投資家は真っ先に「国債売り」に転じるでしょうね。また、現在、国債市場の買い手が日銀だけという状態は不健全ですね。何しろ異次元の金融緩和政策だから、正直何が起こるのかはわからない。
中野 ヘッジファンドって、今回の株価急落にも絡んでいるのかな。
渋澤 ヘッジファンドは政府の成長戦略に注目していて、中身をしっかりと見ている。彼らが失望したら、株式買いをいったん手仕舞うのは当たり前ですね。
安倍首相にとって、下落は「よい薬」に
中野 5月23日以降の下げって、そもそもは単純な調整による売りから始まったわけでしょ。それまでの株価上昇については、8割が短期筋の買いによるものだから、ここまで上がれば売られるのは当たり前。でも、ここまで急落したのは、やはり短期筋の売りに対して買い向かえる長期投資マネーが、今の日本には決定的に不足しているということですよね。
藤野 確かに今の日本の株式市場は、ヘッジファンドなど短期筋の動きに翻弄されやすい環境にあるのは事実だと思います。
中野 この下落はもう少し続くのでしょうか。
藤野 う~ん、まだ震度5くらいの地震はあるかも知れないけれども、もう余震だと思いますよ。じきに収束するでしょう。
渋澤 参院選の後くらいまでは株価が上昇傾向をたどり、秋口に大きく調整するのではないかと思っていたんだけど、どうもその調整が前倒しになったような気がする。
藤野 今回の下げは、安倍首相にとってはむしろ良かったんじゃないかな。というのもいま、憲法改正を容易にするために、憲法96条の要件を見直そうという動きがあるじゃないですか。現時点でこれを議論するのは拙速で、やはり経済をしっかり立て直してからの話だと思うんです。だから、今回の下げで安倍首相は憲法96条に関する議論よりも、まずは経済を成長路線に乗せることに集中せざるを得なくなったかも知れない。これは良い傾向だと思いますよ。
渋澤 先日、会った国会議員の方も、「秋に成長戦略をしっかり打ち出していく」と言ってたな。
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