LINEモバイル、「異色社長」の手腕はいかに? 新事業を率いるキーパーソンを直撃

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1カ月500円からの料金設定は最安というわけではない。嘉戸社長は「社内で侃々諤々はあったが、消耗戦になるので価格競争をするつもりはない。使い放題サービスで独自路線を行く」と語る。

LINEモバイルは現在、無店舗販売。Webからの申し込みしかできないが、「店舗展開については今後のお楽しみ。もちろん必要性を感じているので、やっていきます。ただ、過剰に出店するつもりもない。とんちんかんな店舗を出してもユーザーは来ない。まずは今のスマホユーザーの間で『LINEモバイルで問題ない』と口コミが広がってから、ガラケーユーザーもLINEモバイルにしてみようかと考えるだろう。そのタイミングで店舗を出したい」(嘉戸社長)。

M&AアドバイザリーからLINEへ

嘉戸社長は現在31歳。神奈川県のフェリス女学院で中学・高校時代を過ごした。「フェリス出身者は独自の路線を行く人が多い」。大学は慶応大学法学部。専攻は憲法で、小林節教授(当時。現名誉教授)のゼミに所属した。小林氏はその後に国民怒りの党を立ち上げて代表に就任したが、嘉戸社長が学生時代に小林ゼミに入ったのは「卒論がないため」であり、ここ数年は小林氏と交流はないという。

新事業の立ち上げ担当からトップに。LINEではよくあることだという(撮影:今井康一)

卒業後は外資系証券のUBS証券に入社。M&Aアドバイザリーとして、M&Aの資金調達面をアレンジしてきたという。ソフトバンクでは2012年のイー・アクセス買収に関する資金調達、ドコモでも豪州の案件などを担当した。ちなみに、巨額損失を計上したドコモによる印タタ・テレサービシズへの出資案件には関わっていない。

そのほか、東芝のランディスギア(スマートメーターの会社)買収にも資金調達面で関わった。証券会社を退社し、携帯基地局の設備を効率化するサービス会社を立ち上げたりした後に、昨年2月にLINEに入社している。

LINE入社後はMVNO事業の立ち上げを調査。「MVNO事業を始めるのに当たり、そもそも会社を設立する必要があるのか、から議論を始めた」という。LINEでは、市場調査や事業化の研究をしていた者が新会社の社長に就任することはよくあるため、「社長をやらないか?」と上司から打診があった時に「何の違和感もなかった」という。ちなみに、打診はLINEのメッセージによるものだった。

異色の経歴を持つ社長が率いる異色のMVNOは、果たしてユーザーの支持を集め続けることができるだろうか。LINEにとってモバイル事業の成否は、今後の経営戦略に大きな影響を与えることになりそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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