プレステVRは圧倒的な可能性を秘めている 問題点は「量産に苦戦していること」くらい
ソニーの平井一夫社長はフランスのカンヌで開催されたMIPCOMで筆者のインタビューに応え、「今年はゲーム中心だが、来年は映画や音楽のコンテンツを準備している。大作映画やアーティストとのコラボレーションも進むだろう。しかし、事業としての可能性は業務用の方が大きい」と話した。
おそらく、建築やインテリアなどを工事する前に体験する業務用案件などは早期に立ち上がってくるだろう。”試しにやってみる”にはリスクが高いあらゆるジャンルが、VRによる疑似体験が有益な分野となる。
たとえば、イベント設営や売り場改善といったシーンなど、コンピュータグラフィクスでのシミュレーションが容易な分野は、VRディスプレイによる疑似体験が近い将来、当たり前になっていくと考えられる。コンピュータグラフィックスの世界ばかりではい。旅行先を選ぶ際にあらかじめ行き先の風景や雰囲気、宿泊するホテルを体験するといった、旅行代理店向けのアプリケーションなどもいずれ増えていくはずだ。
すでに医療分野への応用は始まっている。体内の様子を知ることが可能なCTスキャンデータを活用し、VRディスプレイと組み合わせることで手術のシミュレーションを仮想的に行うなどのアプリケーションは、すでに実用化されている。
ソニーは「もっとも成功しているメーカー」
ゲーム機という性能・グラフィクス品質に対して厳しいジャンルの商品で、安価・かつ手軽に使いこなせるVRシステムの量産技術を研鑽するソニーは、VRコンテンツ制作支援やゲーム開発を通じても多様なノウハウが集まってくる。
PSVRの立ち上げに失敗していれば、これらの構想は妄言と言われても致し方ない状況になっていたかもしれない。しかし、VRディスプレイ黎明期の現在、ソニーはあきらかに「業界でもっとも成功しているメーカー」である。
その可能性をゲーム分野だけに閉じて考えるのは想像力の欠如だ。VRディスプレイ技術は、単なる”表示性能の向上”ではなく、インタラクティブ/ノンインタラクティブを問わず、”コンテンツとヒト”の間をつなぐ従来になかった(あるいはハードルが高すぎて一般には普及しにくかった)アプローチ。そこでイニシアティブを執る意義は大きい。
来年とは言わないが、5年後、VR関連製品と技術・プラットフォームは、ソニーグループ全体を支える存在に成長しているかもしれない。その視点が欠けた批評も見受けられるが、それはきわめて空疎に感じられる。
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