病気発覚後の患者には、次から次へと疑問がわいてくるのです。「わたしの病気は、一体どんなものなのだろう」「私の状態はどの程度なのか。その病気に対してどんな治療法があり、それにはどんな副作用がある?」「これからの経済的な負担はどうなるのか」「仕事は続けられるのだろうか」「安静にしていた方がよいのだろうか。あるいは、身体を動かしてよいのだろうか。動かしてよいのなら、どの程度まで?」「食事は制限されるのか」「医師にこんなことを質問して聞いてもよいのだろうか。自分の希望を伝えて、生意気だと思われないだろうか」「他の医療職の方に相談できる機会はあるのだろうか」「一体、どこの病院で診療を続けるのが良いのだろうか」「あの時の決断があるいは間違っていたのかもしれない。もう、手遅れだろうか。あるいは、もっといい方法があるのでは」…。
われわれは、「患者学」で武装するべきだ
このように、患者としての悩みはつきません。そして、これらの問題に対して時間の猶予なく決断していかなければならないのです。いや、決断することに時間の猶予があるのかないのかさえ、よく判らないかもしれません。
そんな患者さんに対し、私は「患者のための患者学」を学びませんか、と呼びかけてきました。患者学の前に「患者のための」とわざわざ付けているのは、医療者が患者から学ぶ患者学、すなわち「医療者のための患者学」と区別するためです。患者と医療者の双方が患者学を学ぶことにより、よりよい医療が実現するのではないかと、考えているからです。
そして、小林麻央さんの後悔を知ると「患者のための患者学」は患者になる前からしっかりと身につけておく必要性があることに気付かされます。ですから、むしろ「市民のための患者学」と名付けて、一般市民の方にも準備してもらいたいと考えるようになりました。
「市民のための患者学」で身につけるべき内容を、わたしは以下の3つに分類してみました。
3つの分野はお互いに関連し合いますし、これだけを学んでおけば完璧だというものではありません。しかし、少しずつでも前進できていれば、いざ患者になった時に役立つことは間違いありません。そこで、ここから「市民のための患者学」の入門編について、解説し紹介していきたいと思います。
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