100%の正解はない中での、議論の作法
「相手の懐に飛び込む」ことは、何でも相手の言うとおりにすることでもない。たとえば、日本人が苦手なのがディスカッション。どのように参加するのが望ましいのか。
何か問題が発生して、どんな作業をするべきか議論する場合、自分しか持っていない情報は積極的に提供し、ほかの人の意見に対しても異論があれば必ず主張する。だが、それぞれが意見を言ったうえで責任者であるリーダーが決定したことは、たとえ自分の意見と異なっていても全力で従う。それがチームワークのあるべき姿だろう。
「それはスペースシャトルで1回目に宇宙に行ったときの船長、NASAのマーク・ケリー飛行士に指導されました。
たとえば、宇宙と地上で協力して作業をしているとき、地上のほうが膨大なデータを持っている。それに対して宇宙にいるわれわれ宇宙飛行士は、地上が持っていない現場の情報を提供する。それらを踏まえて出された指示に、異論があればきちんと伝えなくてはならないが、そのうえで、総合的に地上のフライトディレクターが決断したことには従う。
そこでまた宇宙飛行士が反論していたら、前に進みません。100%これが正しいという正解はない世界。原則としてメンバーはリーダーの指示に従って、物事を前に、建設的に進めようというわけです」(星出)。
ともすると、私たちは議論をしているうちに目的を忘れがちだ。だが、そもそも話し合いは問題を解決するためにある。アイデアは出し合う。だが最終的に決定するのはリーダー。この原則を忘れてはならない。
コミュニケーションを「パッケージ」?
NASAで地上と宇宙のコミュニケーションの訓練を行うか?と聞いたところ、星出の口から出たのは「パッケージする」という意外な言葉だった。
「宇宙と地上の間で情報のやり取りをする場合、どのように情報を『パッケージする』かを考えます。話をどう整理して伝えるか。必要最低限で、簡潔に、言葉を選んで伝える。でも逆にあまりに言葉が少ないと情報が不足します。何と何をどういう順番で言うか。情報をパッケージする(まとめる)んです」(星出)。
また、緊急時と通常時でも、情報の伝え方は異なるという。
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