出身国は、数ある個性の一部分
国際宇宙ステーション(ISS)はアメリカ、ロシア、日本、欧州、カナダ合計15カ国が参加する国際プロジェクトだ。それぞれに達成したい目標があり、利害が完璧に一致しているわけではない。
だが、国を代表する宇宙飛行士たちは、生死を共にして仕事をする、いわば”運命共同体”。個々の目標は違っても「人類に貢献する」という大きな目標自体は一致している。誰かの仕事が遅れたとき、「これはあなたの仕事だから」と知らん顔をしていたら、物事は進まない。
「相手の後ろに国旗はあるが、宇宙で一緒に生活している仲間なんだという意識が強い。結局、『人と人』のつながりなんです。ばか話をして、笑い合って、助け合う」と星出は言う。「もちろん、その人の人格を形成している背景には、どの国の出身でどういう文化があるかが関係している。でもそれも単なる『個性』だと思います」(星出)。
個性は国や民族、宗教だけではない。性別や年齢、職業や所属する組織なども、その人の考え方や行動に関係してくる。
では、人と人がつながる関係を構築するにはどうするかと言えば、「人となりをさらすこと」。その手段のひとつが「飲みュニケーション」だという。
星出飛行士流”飲みュニケーション”
とは言え、ダラダラと愚痴を言い合ったりしない。お互いの垣根を取り払い、ばか話をして人となりを知り合う、貴重なコミュニケーションの場として活用している。
仕事中は立場の違いから、対立関係が生まれがちだ。たとえば、「宇宙飛行士」対「管制チーム」とか、「宇宙飛行士」対「訓練担当官」といったように。厳しい意見の応酬があったり、時には言いたいことが言えないこともあって、釈然としない思いを抱えることもある。そんな関係を、飲み会では解消できる。
たとえば、日本実験棟「きぼう」の部品を作り、星出に訓練を指導したメーカー技術者にこんな話を聞いた。
「私たちは『納品した物を評価される』立場であり、さらに「訓練を指導する立場だった。仕事中はなかなか本音を言えなかったけど、飲み会の席で『あの操作はないんじゃない?』とか、ざっくばらんな会話ができて盛り上がった」という。星出はまんべんなく席を回って、場を盛り上げてくれるというのだ。
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