2017年、欧州が世界経済の火薬庫になる? 「Brexit」をはるかに上回る巨大リスクの正体

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三井:米国の失業率が半分になったのと比べると、欧州の失業率はあまり下がっていないように感じられます。やはり、住宅市場はあまりよくないのですか?

中原:はい。自動車販売が欧州全域で好調を持続している一方で、住宅販売はその国がバブルを経験したか否かによって好不調が大きく分かれています。今のところ、自動車市場の回復では南欧諸国の勢いが目立ってはいるものの、住宅市場ではバブルの後遺症と域内の経済格差を象徴するように、ドイツと南欧諸国のあいだでは大きな差がついてしまっています。

いよいよECBの政策が行き詰ってきた

中原圭介(なかはら けいすけ)/アセットベストパートナーズ代表 経済や経営だけでなく、歴史や哲学など幅広い視点から経済や消費の動向を分析。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、熱烈なファンも多い。著書多数

三井:昨年の御本でもECBの金融政策は間違っているとおっしゃっていましたが、いよいよECB(欧州中央銀行)の政策が行き詰まりを迎えつつあるということでしょうか。

中原:そのとおりです。日銀の金融政策について述べるところとかなり重複する内容になるので、次回に詳しく述べたいと思いますが、マイナス金利は経済全体で見れば副作用のほうがはるかに多く、愚策というほか言いようがありません。現代の経済システムや社会システムは、金利が必ずプラスになるという前提で構築されているからです。そのような前提のもとで、100年以上にわたって改善を重ねながら、連綿と築かれてきたのです。だから、マイナス金利が上手くいくはずがないし、金融政策の限界が露呈するのはそう遠くはないでしょう。

三井:2016年の欧州では何と言ってもBrexit(英国のEU離脱)が大きな事件となりましたが、現在のところさほど大きなショックにはならなかったという印象です。しかし中原さんは、欧州が2017年の世界経済の最大のリスク要因になると見ているということですが……。

中原:私の経験から言って、多くの読者の方々は欧州にはあまり関心がないかもしれないですね。この連載コラムでも欧州のことを書いても、日本や米国のことと比べると閲覧数が実に少ないからです。しかし、2017年の世界経済や金融市場の鍵を握っているのは、欧州の政治リスクの行方にあると断言してもいいでしょう。

三井:それは具体的にどういったことでしょうか。

中原:10月6日のコラム「2017年、ヨーロッパは本当の正念場を迎える」でも述べたように、2017年は欧州にとって決定的に重要な1年になると考えています。4月~5月のフランス大統領選挙、6月のフランス国民議会選挙、9月のドイツ連邦議会選挙と、欧州統合を推進する二大国の選挙結果が、政治的なリスクとして非常に懸念されているからです。選挙前に大規模なテロが起こるようなことがあれば、フランスやドイツでは極右政党や極右政党候補者に投票する人々が増えるでしょう。EUやユーロ圏の崩壊というシナリオが現実的になってくる可能性が捨てきれないわけです。

三井:来年は欧州を注視していかなければいけない年なんですね。

中原:フランスやドイツの国民には良識を失わないでほしいと切に願っています。歴史的に見て、極右が台頭した後は、世界が動乱に陥る可能性が高まってしまいます。そういった意味では、欧州が2017年の世界経済の火薬庫になるのは間違いありません。

次ページでは、2017年の中国経済は?
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