三井:中国は目先の景気をよくするために、将来の反動にまで気を配っていられないという理解でよろしいですか?
中原:おっしゃるとおりです。局所的に起こっている不動産バブルへの規制が遅れがちなのも、そういった理由があると思われます。中国共産党や中国政府は、中国経済が減速するなかで不動産投資には下支え役として期待はしているものの、それゆえに大都市の住宅市場にはバブルに近い過熱感があるという認識をはっきりと持っています。
その一方で、大部分の地方都市では今なお、住宅市場の低迷に苦しんでいます。過去2年間で不動産在庫が「平方メートル換算」で4割も増え、実にその7割を地方都市が抱えているのです。いずれにしても中国は、一部の大都市の住宅バブルを抑えながら、同時に住宅市場全体の悪化を食い止めるという、非常に難しい舵取りを迫られているわけなのです。
中国経済の最大リスクとは?
三井:いよいよ中国の「世界の工場」としての限界が見えてきたということですが……。
中原:おおむねの地域では過去5年間で最低賃金が2倍になりましたが、そういった大幅な賃上げの流れは2016年~2017年に止まる兆候が見え始めてきています。
中国最大の経済規模で「世界の工場」として知られる広東省(深圳市を除く)が、最低賃金の引き上げを2年間凍結するという方針を2016年になってから決断したからです。企業がこれ以上の賃金上昇に耐えられなくなっているので、賃金の引き上げはさらなる企業の撤退や倒産を招き、社会不安を誘発しかねないと判断したのです。
三井:最後に、今後の中国で一番懸念すべきリスクは何でしょうか?
中原:最大のリスクは、民間債務の膨張だと思います。2016年版でも指摘していますように、リーマン・ショック後の世界経済を下支えした新興国の多くは、高成長の過程で借金依存症に陥ってしまい、民間債務が身の丈以上に膨らんでしまっています。歴史的な見地からも中国の民間債務の分析をしていますので、ぜひ新刊を手に取っていただければと思います。
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