OJTの“限界を超える”花街の教え

一流に学ぶOJTの作法(2)

経験のわな

より効果的なOJTを実施するためには、個人の現場での経験を客観視し、行動と結果との因果関係について分析する姿勢を、教える側に身に付けてもらうことが重要になります。

単なる経験則なのか、よく考えられた指導なのかの違いが、ここにあります。
経験だけを振りかざした指導方法は、「経験のわな」に陥ったものになりがちです。経験はとても大切な資源ですが、それだけでは不十分です。個々の経験を統合し、よりよいものにしようという組織としての知恵の形成という視点をもって、積み重ねられる経験を的確な判断基準へ育てていくことが大切です。

しかし、職場での経験年数が長くなると、自分の経験に頼りがちです。また、それでうまくいくことが実際に多いため、経験を検証することなしに、OJTを行ってしまうことも多くなります。その結果、人がうまく育たない理由について自分のやり方を検証せずに、被育成者の責任に帰してしまうということにもつながります。

このやっかいな「経験のわな」を避けることが、よりよいOJTの実践のためには必須です。やる気のある若い人たちを、潰さずに育て、さらに将来のOJTの指導者にしていくために、京都花街では、現場での判断基準をあいまいにしないで実践を重ねていく工夫をしています。

 

小さな失敗こそ、報告

舞妓さんになってほぼ1年が経ち、だらりの帯の扱い(前回を参照してください)にも慣れ、お座敷での接客に自然な笑顔が出るようになってきた、そんな時期の舞妓さんが、少ししょんぼりしていました。

お座敷で失敗したことを、置屋のお母さんに報告しなかったことについて、

「しょうもないことやさかいに、言わへんのは、あかんのえ」 

と諭されたのでした。

失敗にすぐ気がついて対応したので、お客様は怒っていなかった、現場のお姉さん芸妓さんにも迷惑をかけていない、自分としては精いっぱいうまく処理できたのに、どうしてお母さんからそこまで言われるのかわからなくて、戸惑った様子でした。

京ことばで「しょうもない」とは、ささいなこと、つまらないこと、といった意味です。

ですから、このお母さんの言葉は、現場ですぐ対応できるような小さな失敗でも必ず報告しなさいということ、いわゆる報・連・相を促す言葉だろうと考えられます。

でも、さらによく言葉の意味を考えてみると、「小さなことだからと自分で勝手に判断して責任者に報告しない、ということをしてはいけない」と、指導されていることがわかります。

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