彼女たちが、マニュアル対応では作り出せない心のこもったおもてなしが提供できるように、業界で共有された判断基準とその徹底した指導育成があるので、お座敷ごとに違う芸舞妓さんのプロジェクトチームが編成されても、高品質のサービスをチームで作り出せることにつながっています。
舞妓さんたちは新人を卒業する時期になると、現場でのささいな失敗がなぜ生じたのか、それがほかの人たちに迷惑を及ぼしているかどうかなど、より深く考えていくことが求められるようになります。新人時代を乗り切れば、次のキャリア形成のステップがあり、それが個々人の経験だけに頼らず、業界で智恵を共有していく姿勢を作ることになります。
京都花街の舞妓さんの育成の秘訣は、伝統文化があるからだ、とよく言われます。
しかし、なぜ、舞妓さんたちはマニュアルがなくても、業界標準の判断基準が共有できるように育成されていくのかについて深く考えてみると、OJTに頼って人材育成を重ねてきた業界だからこそ、個人のカンや経験、やる気といった曖昧なものに頼りがちなOJTの限界を理解し、対応を重ねてきたことがわかります。
伝統文化が育んだ智恵を現代に生かす視点を私たちが持てば、そこから、学ぶべきところが見えてきます。
OJTのよさを生かしながら、その限界を超えるための標準化は大切です。しかし、基準を作るとそれに縛られ、臨機応変さを失うリスクもあります。次回は、その点にどのように対応しているのか、舞妓さんを卒業する頃の事例を紹介しながら、考えていきます。
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