「神田古本まつり」が本好きを魅了するワケ 本の世界に浸ると、いろいろなことが見える

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古本屋巡りは、秋の楽しみだ(写真:ケイセイ / PIXTA)

いよいよ秋本番、最高の古本屋巡りシーズンとなった。本好きにとって「読書シーズン」は当然通年。しかし猛暑・極寒の中、無理矢理弾丸古本屋ツアーを強行してリアルに死にかけたことがある身としては、どうせ何軒も古本屋を回るなら、やはり春か秋に限るというのが正直なところ。そんなシーズンに、古本猛者とその道の初心者のどちらにも最高のイベントが間もなく始まろうとしている。神田古本まつりである。

「神田古本まつり」とは?

東洋経済オンラインが急激な飛躍を遂げる直前にあたる3年前、半年間ほどひっそり連載されていた古本エッセイ「稀珍快著探訪」が、このほど大量の新ネタを織り込み、『怪書探訪』と名を変えて発売されることとなった(10月21日発売、上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

神田神保町は、世界でも最大規模の古書店集積地である。そして神田古本まつりとは、読書週間の時期(第57回となる今年は10月28日から11月6日に開催)に、神保町で営業している古本屋160店舗のうち100店舗以上が腕によりをかけた品揃えのワゴンを出し、神保町の歩道が古本屋の出店で埋め尽くされる一大イベント。

しかも出店だけでなく古本屋そのものも通常通り営業しているのに加え、それぞれ1割引キャンペーンなど、まつりに連動したサービスを行っているので、この時期の神保町は、一粒で二度も三度も美味しい。

いわば神田古本まつりは、お祭りに出かけた子供が、左右にずらりと並ぶ屋台を前に百円玉を握りしめ、たこ焼き食べよか、金魚すくいしよか、射的に行こかと舌なめずりをしたあのワクワク感を、再び体験出来るハレの場なのだ。

20年近く前に東京から地元にUターンしてしまった私は、この痛快な祝祭に参加出来る機会もめっきり減ってしまい切歯扼腕しているのだが、それでも先年、ちょうど神田古本まつりの時期に東京出張となり、しかもお客様との夜の会食前にほんの少しだけ時間が空いた。タクシーを用いても神保町にいられる時間は30分しかなかったが、こうなったら迷う時間ももったいない!とばかり神田古本まつりに身を投じた。

本来ならば、どこかに息を殺して潜んでいるであろう掘り出し物を見つけ出すべく、一つ一つのワゴンを愛おしむように漁るべきなのだが、こちとら刻限を切られて舞踏会に 出かけるシンデレラよろしく時間に追い詰められている。そこでやむを得ず、通常歩く速度より少し遅い程度で歩きながら、各ワゴンに並ぶ古書たちの背表紙デザインをワゴンごとパッと目に焼き付け、何かが自分のセンサーに引っかかる店でのみ足を止め、その店については若干丁寧にチェックする、という非常手段を選択した。

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