イエレンFRB議長は政治圧力をかわしている

トランプの「民主党寄り」批判はお門違いだ

イエレン米FRB議長は政治の圧力に抗い続けられるか。ボストンで10月14日撮影(ロイター/Mary Schwalm)

米大統領選挙の討論会で共和党のドナルド・トランプ候補が、米国連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が政治的な役割を演じているとの持論をあらためて強調した。トランプ氏の批判は、FRBが(ヒラリー・クリントン氏と同じ民主党のオバマ現政権下で)景気回復が進んでいると有権者に思い込ませるため、あえて低金利政策を続けているという理屈だ。

これは的外れではないが、私はそうは思わない。仮にイエレン議長が金利の据え置きを決めているとすれば、彼女はなぜここ数カ月間、FRBが市場想定よりも前倒しで利上げを行う可能性があると主張し、長期金利の上昇を招いたのだろうか。

ニクソン時代の「前例」

中央銀行当局者が選挙前に政権を支援した前例はある。ニクソン米元大統領は1972年時の大統領選挙に勝つため、当時のバーンズFRB議長に景気刺激策を要請した。結局、ニクソン氏は大差で再選され、バーンズ議長の政策は1970年代の世界的なインフレ、固定相場制の破綻へとつながった。その長期的な負の影響は深刻だったといえる。

イエレン議長が米国のインフレ率が2ケタとなった1970年代の悪夢を繰り返そうとしているのかは疑問だ。今のところ、インフレが差し迫っている兆しがあるとの観測はほとんど示されていない。

利上げと金融引き締めを急がなければ、米国は2008年後半に2万5000%強のインフレを記録したジンバブエのようになってしまうと主張する人もいる。だがFRBのバランスシート拡大が高インフレにつながるとの見方は外れ続けてきた。

米国のインフレ率は目標を下回り続けてきた。現在もFRBが公式のインフレ目標2%を継続的に達成するため刺激策を行う意思や能力があるかについて、市場は懐疑的だ。

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