時期尚早な利上げを試みた欧州中央銀行(ECB)やスウェーデン国立銀行などの中央銀行は、米国とは逆のコースを強いられてきた。FRBは彼らと同じ運命となるのを避けたがっているようだ。
米国経済はこのところ好調で、追加利上げが近づいているとみられている。だがECBや日本銀行は緩和モードにあり、他国の中銀も同様だ。深く考えずに、米国が早急に利上げすべきと主張するのは愚かだ。
金融危機の際、中銀は債券の大量買い付けなど、一時的な緊急策を果たすよう求められた。しかし公平を期するために言えば、中銀は政治の圧力を受けないための、終わりのない戦いを続けている。大半の中銀にはいまだに明確な出口が見えていない。そしてこのことが、政治との適正な距離を取りづらくしている。
イエレン議長には「綱渡り」の素養がある
政治からの介入余地を皆無にする唯一の策は、各国政府が金を基準に通貨価値を定めていた金本位制に復帰することだとの主張もある。しかし金本位制の推進論者は、過去の慢性的な金融危機と景気後退とを無視している。金本位制は第1次世界大戦当時に各国政府が放棄し、その後二度と信認を得ていない。
先進的な人々は、ビットコインのような民間の仮想通貨が主流になれば、政治の介入をなくせると主張している。これも甘い考えだ。仮想通貨技術は興味深く、幅広い活用が可能だが、高額紙幣の代わりにはなりえない。政治圧力を排することができる保証もまったくない。
通貨の長い歴史においてさまざまな技術革新が生まれたが、最終的には政治がそれをコントロールしてきた。通貨制度は今後も政府の管理下にあり続けるだろう。
中銀を政治から完全に独立させる最善の方法は、時間がかかると予想されるが、マイナス金利政策の有効な手段を拡大することだ。FRBなど各中銀はそれまで外部からの強い圧力にさらされる綱渡りを続けるしかない。幸運なことにFRBには現在、それを行う意思と能力を備えた議長がいる。
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