QE3は縮小方向、問われる金利上昇抑制 5月FOMCではQE3運営の裁量の幅を広げたが…

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縮小

筆者は、先行きは低インフレが続くもののディスインフレの深刻化とデフレ懸念の台頭という事態には至らず、QE3拡大の蓋然性は低いと予想する。QE3の議論は引き続き「縮小方向」というベクトルを持つだろう。

ただ、QE3運営の条件にインフレ見通しが加わったことで、筆者はかえって将来的に別のリスクを高めるのではないかと危ぐしている。2月の本欄で紹介した、債券市場や短期エクイティ商品を媒介とした新たなバブルの膨張・崩壊というリスクだ。インフレ見通しが判断材料に加わり、なおかつ低インフレが続くと考えると、緩和解除のペースは従来考えられた以上に緩やかになるかも知れないからだ。

「リーマン2への備えなし」という不安

「備えあれば憂いなし」という言葉があるが、次のバブル崩壊への備えは心許ない。ニューヨーク連邦準備銀行の報告書によれば、短期金融市場の中でも重要な役割を果たしているトライパーティ・レポ市場は、未だに市場参加者の投げ売り(ファイヤー・セール)に対して脆弱であるという。特に、取り付けに遭った仲介業者(ディーラー)が破たんし、それに呼応するように、レポ市場で資金を運用していた投資家らが資産を投げ売りし始めた場合、「影響を和らげるための、きちんと整備された手段はまったくない」(ニューヨーク連銀)というのが実情だ。

リーマン・ショック後には金融規制が強化され、当局によるモニタリングも充実してきている。しかし、いざ短期金融市場で投資家の投げ売りが始まった場合には、リーマン・ショックの再来(リーマン2)を抑える術は確立されていない。連邦準備制度理事会(FRB)も、その裁量によって個別の民間金融機関等を救済する権限を失っていることを忘れてはならないだろう。

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