QE3は縮小方向、問われる金利上昇抑制 5月FOMCではQE3運営の裁量の幅を広げたが…

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米国では長期金利上昇を抑える神風が吹こうとしている。連邦財政収支の劇的改善だ。議会予算局(CBO)が最近発表した財政見通しによれば、2013・14年度の財政赤字は今年2月時点の見通しと比べて総額2590億ドル改善するという。現在は国有化されている連邦抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の業績改善で政府への巨額配当が見込まれるようなったことが一因だ。

この財政収支見通しの改善幅2590億ドルはQE3のうちの米国債購入分450億ドルの約半年分に相当する。それだけではなく財政赤字自体が、2012年度の1兆0870億ドルから2013年度6420億ドル、2014年度5600億ドルへと激減する(現行法に基づいて財政運営が行われた場合)。QE3縮小に伴う長期金利上昇圧力は、こうした財政の好転による米国債供給の減少分だけ緩和されるだろう。

しかし、米国経済のファンダメンタルズが大きく変わりつつある局面で金融緩和策の転換を図るには慎重な対応が不可欠、という点は変わらない。ここでは1951年の古い話を紹介しよう。

ボンド・コンバージョンの教訓

1951年3月に米国財務省と連邦準備制度理事会(FRB)が合意(アコード)を取り交わし、それまでFRBが長らく続けてきた金利ペッグ(短期・長期金利を一定に留める政策)を止めたとき、特別の措置が採られた。長期金利の急上昇による銀行への打撃を緩和するため、米国財務省は市場に流通しない米国債(非市場性国債)を発行し、銀行等が保有する既発債と交換したのである。

ボンド・コンバージョンと言われる政策だ。なお、銀行がそれまで米国債保有を膨らませてきたのは、戦時下で国を支える必要があるという「道徳的説得」と、民間の借り入れ需要が乏しかったことがあったと言われる。

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