専門性向上に躍起になる人々
ここで問題提起となるケースを紹介しましょう。登場人物は食品メーカーの営業企画部に勤務しているGさん(28歳)。社内でも大人気の営業企画部に異動になって、楽しくて仕方がない毎日を過ごしています。ちなみに仕事はWebを担当。新商品の公式サイトや、Facebook、Twitterの管理などのWeb媒体に記事を掲載してもらうための取材の調整などが主な業務。
「Web担当にとってアクセス数は大きな指標です。イベントなどを仕掛けた翌日などに、アクセス数がぐんと伸びているのを見るとモチベーションが高まります」
と、その仕事の魅力を語ってくれました。入社する前から営業企画部があこがれの部署であったようで、専門性を高めて、営業企画部での仕事を極めたいと相当な情熱を傾けている様子がわかります。ただ、取材中に熱気ある雰囲気が一気に変わり、重苦しい状態になった瞬間がありました。それは、
「営業企画部で学んだことを生かして、やってみたい別の仕事ってありますか?」
と質問をぶつけたときのこと。とんでもない、失礼なこと聞きやがって……とでも言いたそうな目にキッと変わったのが印象的でした。ちなみにGさんは営業企画部に異動して4年目。後で聞いたのですが、この会社では4年をメドに異動のタイミングが訪れ、
・同じ部署でキャリアを積み上げる人
・異動して別の仕事に移る人
とに選別されるのが《会社の慣例》になっているようです。まさに選別をされている状態と自覚しているのでしょう。しかも、異動すると
《あいつは営業企画部で使えなかったから異動したのだ》
と、周囲から烙印を押されてしまい、二度と同じ部署に戻れないというのが定説になっているようです。だから、彼は過敏に反応したのでしょう。語気を荒げて、
「営業企画部に骨を埋める覚悟です。それ以外は考えられません」
とキツイ一言が返ってきました。加えて、
「専門性をさらに高めるために、日々、勉強中です」
と、しっかり自己アピールをしてきました。取材にきた人に対してさえ、ついアピールしてしまうほど、切羽詰った状況なのでしょう。
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