今まで散々言い尽くされてきたことだが、景気回復のためには、日本の家計部門が保有する約1500兆円の金融資産を動かさなければならない。しかるにデフレ下の経済では、家計部門は資金を銀行に預けてじっとしていることが合理的であった。消費行動を先送りする方が、それだけ安くいいものが買えるのだから無理もない話である。
ところが「黒田日銀」は、異次元の金融政策に打って出ている。本当にデフレが終わるのなら、消費行動は早め早めが望ましい。物価上昇2%が実現した日には、手元の現金の価値は年率2%で減価していくことになる。予備校の熱血先生がテレビで言っている通り、「いつ買うの、今でしょ」ということになる。
同じことが企業にも当てはまる。リーマンショックと東日本大震災があったために、日本企業の設備投資はここ数年手控えられてきた。そろそろ動きださなきゃいけないことは、理屈ではわかっている。しかるに投資行動にはいろいろと準備が必要だし、消費のように簡単には決められない。
デフレ下の企業経営においては、コストを削減し、借金を返済し、内部留保を手厚くすることが合理的となる。設備や社員数は、「足りないくらいがちょうどいい」ということになる。それに慣れてしまっているので、「さあ、設備投資だ」と思ってもなかなか身体がついていかない。
これまでの日本経済においては、景気回復局面は決まって輸出主導型であった。それだけにまず企業部門に火が点き、それから家計部門が良くなるのが毎度のパターンであった。めずらしいことに、今回はその逆になっている。
問題は今回の決算を受けて、日本企業の行動パターンが変わるかどうか、デフレマインドから抜け出せるかどうかである。
今回の決算では、案の定ではあるけれどもトヨタ自動車の決算がすごい。営業利益は1兆3200億円。純利益の9621億円は前期比約3倍だ。なおかつ、想定為替レートは1ドル90円と保守的に見積もっているので、このまま為替が100円で推移すると、来期はさらに10円分(約4000億円相当)の上積みがあることになる。
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