グローバルエリートからのアドバイス――今中氏へ
いつもながら本題を外れ、社会への問題提起に話が飛んでしまった。しかしこれは、すなわち今中氏への回答が「やはり困難」と短く終ることへの私なりの申し訳なさの表れである。
今中氏への答えは残念ながら厳しい。とりあえず、答える前に実際体験してみようと、以前の来日した時にパチンコ屋さん5軒ほどに足を運んでみたが、あの“噴煙渦巻く迫力―無気力のカオス空間”からは、やはり直接の転進は想像できない(私は勇気を出して店員さんにインタビューをしようと思ったが、気が引けてやめておいた)。
一般的に、好条件とは言えない現職からの連続的なキャリアアップが難しい場合、今中氏の学習態度にもよるが、本当にコンサルティングファーム等を目指すなら海外MBAやUSCPA、ないしより手っ取り早く入れる国内有名MBA(もっと言うと慶応ビジネススクールや一橋)をテコに、キャリアジャンプの準備に入ることが現実的だ。これなら1~2年頑張れば現在の28歳という年齢を考慮すれば、まだまだキャリアアップの余地は十分ある。
しかしそれ以前に、今中氏にいろいろ聞いて相談をいただいた感想を言えば、“経歴上コンサルは難しい”と悩む以前に、どの転職先に移るにしても、そもそも基本的な就職準備ができていないのが気になった。
ご相談者の中には、「今までこんな経歴だったから、今さら私が頑張っても誰も雇ってくれない」と弱音を吐く人が頻繁にいる。しかしそれはおそらく、自分があこがれている職場の人たちの、並大抵ではない努力と鍛錬の積み重ねや、習慣化した1日12時間労働と4時間読書の努力に目を向けずに嘆いているのではないか。
多くの人がテレビを見ながらカルビーのエビせんべえをかじっている間、あなたの10倍稼いでいる人たちは、24時間消えることのない蛍光灯の下、土曜の日経新聞に載った投資先の粉飾決算スキャンダルのインパクトを夜通し計算していたりする。今回の今中氏のケースでは、今までの努力と経歴で“負けている”分、今後の人生はそれをはるかにしのぐすさまじい自己の変革への献身が必要だ。
私は適当に「頑張れば、夢はかなう!」などと無責任なことを言うつもりはないが、「頑張らなければかなわない」と断言しよう。そもそも夢とは何か不明なことが多く、その夢の内容も時とともに変わるだろう。しかし目標を高く持って全力で打ち込む人生は、仮にその目標が達成できなかったとしても失敗とは言えない。高揚感と充実感にあふれた人生は、適当に過ごして得た金銭的報酬より、よっぽど成功した人生と言えるだろう。
現状に甘んじず、自ら困難な仕事にチャレンジする皆様に、はるばるフランスの彼方からエールを送りつつ、本日のコラムの締めとさせていただきたい。
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