「2020年教育改革」で潰れるのは、どんな塾か 「ゆとり教育」大失敗から文科省も反省した

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受験産業は、当時さまざまな調査で浮き彫りになっていた「子どもの学力低下問題」を上手に使って、「ゆとり教育改革はさらなる学力低下を招く」と新聞・雑誌・討論番組といった各種メディアを通じて攻撃。特に「円周率を3で教わるとバカになる」という決まり文句は、人々の心に突き刺さった。

そして公立学校不信の論調を作り上げることに成功する。その代案として私立中高一貫校を保護者に提案し、中学受験市場の拡大へとつなげたのだ。事実、中学受験市場は2001年から2007年まで右肩上がりの成長を見せた。

「おカネのある家庭しか、いい教育を受けられない!」という批判にさらされた文科省は、最終的にゆとり教育改革を断念。元の詰め込みドリル教育を強化して、公立学校の立て直しを図った。筆者の知人である文科省の官僚も、当時を振り返って「あれはわれわれの敗北だった」と悔しさをにじませていた。その意味で、2020年の改革は文科省のリベンジ戦といっていい。そして絶対に負けられない戦いを前に、彼らは賢い戦略を採用した。それが「入試制度改革」だ。

前回は、教育の中身を変えたのに評価方法(テストや入試)を変えなかったため、「学力という結果につながらない」という批判に屈することになった。したがって、今回は産業界の要請や、世界的な教育論調を背景に、教育の大きな出口ともいえる大学入試を抑えにかかる。

入試の変革が、業界を変える

大学入試そのものを変えてしまえば、それをゴールとしてトレーニングする人たち、つまり、学校の先生・受験産業はやり方を変えざるをえない。入試方法を変え、学力が意味する内容まで変えて、これまでの詰め込みドリル教育を時代遅れにしてしまう。そんな構造的なアプローチで既存の教育をひっくり返そうとしているのだ。

では、入試や学力の内容はどう変わるのか。詳細は検討段階ではあるが、すでに方向性は示されている。

まず、「より多く覚え、より早く解く」というこれまでの学力は、「知識・技能」の学力と名付けて、今まで同様、試験で測られる。その意味では「詰め込みドリル教育」がなくなるわけではない。計算問題の練習や歴史人物の名前の暗記といった勉強はこれからも続く。しかし重要なのはここからだ。

世の中に出たら、答えのない問題に取り組まなければならない。少子高齢化問題や経済政策に始まり、企業の商品開発やPRの仕方まで、今や正解はひとつではない。知識は重要だが、むしろ自分なりのアイデアを作り出さなければならないのだ。

そこで「正解のない問題を解決する力」が重要になってくる。文科省はこの力を2つ目の学力として「思考力・判断力・表現力」と定義し、それをより一層重視する試験を用意する。今までのセンター試験は廃止され、記述式や、コンピュータを使って受験するシステムであるCBT(Computer Based Testing)方式、科目の枠を超えた総合型の試験が検討されている。

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