セルジオ越後「若手育成を根本から改めよ」 サッカー界に影を落とす「補欠制度」の弊害

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――日本はJリーグの創設とともに選手育成にも力を注ぎ、アジアで先行してきました。ただ、ここにきて中国、カタールやUAEなどの中東勢、タイやベトナムなどの東南アジア勢なども育成に力を入れるようになり、差が埋まりつつある。それどころか、逆転されつつあるようにも感じます。

育成を見直す時期に来ているのは間違いないでしょう。そこで今、育成年代ではトーナメント戦ではなく、シーズンを通してリーグ戦を行うスタイルにシフトしたり、J3にU−23チームを参加させて、10代後半、20代前半の選手たちが試合経験を積めるようにしています。そうした試みは大事ですが、もっと根本的に変えなければならないことがあります。

それはパイを広げることであり、競技人口を増やすことであり、サッカーやスポーツを楽しむ人の数を増やすこと。何度も言ってきましたが、日本のサッカー人口は、僕が来日した1972年から増えていません。増えているのは日本サッカー協会への登録人数であって、実際に試合に出場してプレーする選手の数は変わっていないんです。

補欠のいないブラジルは誰もが試合に出る

――以前から「補欠制度」には問題があると訴えています。

そうです。僕はJリーグが誕生する20年以上前から日本でサッカーの普及活動をしてきて、サッカーを始める子どもたちが増えていく様子を見てきました。部員が30人から100人に増えたチームもたくさん知っています。ところが、大会には20人しかエントリーできないし、一つの学校から1チームしか出場できない。実は、試合に出ている選手の数は変らないまま、「補欠」の人数が10人から80人に増えただけなんです。

僕が生まれ育ったブラジルには補欠制度なんてないから、ベンチに入れず、ただスタンドで応援するだけの選手がたくさんいることを知ったときは衝撃でした。試合に出なければ技術も身につかず、相手との駆け引きも覚えられない。ブラジルにも10代の頃は芽が出ずに地元の小さなクラブでプレーしていても、その後、プロになる遅咲きの選手もたくさんいます。

これが日本の場合、「補欠制度」があるために、大器晩成の選手を“発見”できなかった可能性もあります。何よりサッカーを楽しみたくてサッカー部に入り、日本サッカー協会に登録費まで収めているのに、プレーする機会を得られないのは、差別ですらあると感じます。

――高校サッカーや高校野球の中継などで「部員が100人もいて凄い」「3年間、ベンチ入りできなかったけど、頑張った」というような言葉を聞くことがありますが、美談でもなんでもないと。

ええ。海外では、選手の人数が多くなれば、Bチーム、Cチームとエントリーするチーム数を増やします。だから補欠は生まれません。クラブ間での行き来も自由なので、試合に出られない選手は新しいチームを探すし、レベルが合っていないと感じれば、自分のレベルに合ったクラブに移ります。

日本でも個人種目の場合は、1校につき何人もの選手が大会に出場できます。それなのに、団体種目になると、ひとつの学校から1チームしか出場できなくなってしまう。おかしいですよね、団体種目は個人の集まりだというのに……。

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