SMAPの世界観を崩したジャニーズへの失望 優れた表現への尊敬があっただけに

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矢野:ディズニーランドには緻密なマニュアルがない。世界観を共有して、あとは自由にふるまう。初代の「ジャニーズ」は、米国のディズニーランドに遊びに行ったと言います。

強固な世界観は流動性を担保してこそのものです。ジャニーズはそれを今までは、上手にやってきていた。SMAP、TOKIO、V6、Sexy Zone、A.B.C-Z……それぞれ違うけど大枠でみると「ジャニーズ」としか言いようがない。

だから、今までのジャニーズであれば、SMAPの世界観を持ったまま解散させていたのではないか。やはり、僕はSMAPがどうこうよりも、そのバランスを失った事務所のあり方に失望したのかもしれません。

常見:ファンたちに対していい別れ方をさせるというのが、ジャニーズにとって世界観を維持することだったと。本当の強権だったら「お騒がせしたけれど、僕たちそれぞれの道で頑張るから応援してね!」とSMAPにやらせたでしょうね。キムタクとみんなの温度差もあらわになるし、こんなかわいそうなSMAPは見たくないとなる。

矢野:強権的にふるまっていることは、みんななんとなく知っていたし、それに対する批判もあった。でも一方で、優れた表現を生んでいるんだというリスペクトもあった。信頼していたファンからすると、あの会見は「世界観を台無しにされた」と感じるでしょう。リスペクトの部分を失わせてしまった。

素敵な夢を見させておくれ

常見:最後にSMAPに何をしてほしいですか?

矢野:難しいですね……新曲は出してほしいですね。個人的には、もう、無理にでもライブを見たいという感じはしない。だから、もう少し長い言葉で自分の気持ちを綴ったライナーノートのCDが出ると最高ですね。それが、ディスコティックな曲だったらさらに最高です。「Dear WOMAN」はダンサブルな曲で、日本を背負っているけれど、彼ららしさもある。あのバランスの曲が聞きたいです。

常見:僕は「いい別れ方をしてよ」と思ってしまいますね。山口百恵がマイクを置いた姿や、キャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」と言うような。今までのネット掲載のタブーをやぶり、YouTubeでライセンスフリーで流してほしい。終わってからのSMAPは、自由にしてほしいですよね。

(構成・写真:山本 ぽてと)

SMAP解散のもうひとつの論点は、人と組織の関係である。今回の解散劇においては、ジャニーズ事務所に関する批判が集中した。
文中にあるように、私は解散するならするで、心に残る解散劇にしてほしかったと考えている。その点において、ジャニーズ事務所に対しては批判せざるを得ない。国民的アイドルグループなのにも関わらず、だ。やや欲張りかもしれないが、山口百恵がマイクを置いたように、あるいはキャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」と言ったように、ドラマを期待していた。まあ、いまのSMAPの状況からすると、それは贅沢な要望かもしれないが。
ただ、ジャニーズ事務所をすべて否定してしまうのは筋違いだ。なんだかんだ言って、ジャニーズ事務所の関係者が発掘し、仕掛けたことでSMAPはブレークした。組織なしで、ここまでのブレークはあっただろうか。
SMAPが正式に解散する日が迫っている。もう歴史の歯車は止められないのだが、お願いだから、SMAPらしい別れ方を今からでも模索して欲しい。
YOUはこの件、どう思っただろうか?

 

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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