では、一流の人に学ぶ「接待の秘訣」は何なのか。これまで述べてきたことの裏返しである「接待の目的の認識」「食材+文化的背景への配慮」「幅広い教養」に加えて、世界の一流ビジネスリーダーたちが意識しているポイントを2つ解説しよう。
【1】「偉くない人」への全方位気遣い
接待中、見ていて痛々しいほどに、お客さんの中の「偉い人」「意思決定者」にのみ全神経を集中させる二流の人がいる。
そういう人に限って、自分の部下や店員さんには平気で非礼な態度をとり、またお客さんの中でも下っ端の人には最初の名刺交換以降、目配せすらしない。
これに対して一流の人は、接待の気配りも一流である。下っ端の「若手の部下」にも酒をつぎ、等しく笑顔で話題をふり、店員さんにも極めて丁寧に接する。お客さんの飲み物がなくなりかけたら部下にそっと囁くし、帰宅の時間が近づけば1秒も待つことなく、タクシーがシームレスに用意されている。
一流の接待の場では「いちばん偉い人が、細部にまで等しくいちばん気を遣っている」ものである。
年齢や役職は関係なく、接待に参加している人全員に敬意をもって接しているかどうかが、その場の雰囲気づくりに重大な影響を与えるのだ。
【2】「偉い人」の文化的気遣い
接待を語るうえで最後にご登場いただくのが、まさかのロイヤルファミリーである。
私が親しくしている某国の政府高官がその皇族と留学時代の友人で、そのよしみで私も食事会に参加させていただいたことが最近あった。
そのときの食事会の文化水準が高いこと高いこと。食事が始まる前にまず、伝統楽器の演奏が始まり、その楽器の歴史に関するレクチャーを演奏者が行い、その国の歴史や文化について高尚な経験ができるように配慮されていた。
もちろん食事のコースもその国の伝統が反映されているメニューが厳選され、話題もエリザベス女王に会ったときの話や環境問題から外交問題まで、トピックも俗世を離れている。
私は何も、すべての接待で、「いきなり琴と和太鼓の演奏会で始めて、縄文時代から明治維新に至るまでの日本史をぶつぶつ発表せよ」などと言いたいわけではない。
ここで申し上げたいのは、たんにお客さんとワイワイ騒ぐだけの接待も別にあっていいが、「接待の目的の設定」から、「食材+文化的背景への配慮」「会話のトピックの厳正な選定」そして「文化的体験」まで、細部にこだわった「一流の接待」が世の中には存在するということだ。
新著『最強の働き方』では、お客さんへのお土産選びで、毎回、包装紙やリボンにまで徹底的にこだわる人の話を紹介した。万事に気を配り、こだわれる人ほど、ビジネスでもいい仕事をし、成果を残すものである。
二流の人は、接待も二流である。たかが1回の接待で、大きな仕事にも共通する「徹底した細部への配慮」があるかどうかが見事なまでにバレることを、肝に銘じなければならない。
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