金融庁、日本版ISAの「難点」に是正策 口座移動が可能に、14年税制改正に要望へ

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2014年1月にスタートする「日本版ISA」(投資に関する非課税制度)について、金融庁は14年の税制改正要望の一つとして、口座開設の柔軟化を盛り込む方針だ。これが実現すると、銀行、証券会社が「日本版ISAの難点」ととらえてきた問題のひとつが解決する。

日本版ISAは、上場株式、株式投資信託への投資に対し、上限で年100万円、5年間で最大500万円までの投資元本から生まれる譲渡益(キャピタルゲイン)、配当益(インカムゲイン)が非課税となる制度で、株式などの長期保有を促す仕組みだ。現在適用されている10%の軽減税率は終了する。14年1月の取引開始に先立ち、口座開設が今年10月1日から始まる。今のところ、投資対象は現物株式と株式投信に限られている。期間は5年間だが、実質的には10年間の制度となっている。

「不満があっても、5年間は移せない」が…

「日本版ISAの難点」と指摘されてきたのは、1投資家につき1口座に限られているISA専用口座は5年間にわたって、他の金融機関に移行できないことだ。当初に開設した金融機関ではなくて、別の金融機関に口座を開設しようと思っても、投資家は5年間、それを実行することはできない。金融機関の販売姿勢やアドバイスサービスに不満を感じても、その状態に甘んじざるを得ないわけだ。

金融庁は、そうした口座移動の問題点を解消するため、今夏に政府に提出する税制改正要望のなかに、口座移動の柔軟化を盛り込む方針を固めた。要望が実現すれば、14年から口座移動は自由になる。

ただし、これは、投資資産が口座間移動するポータビリティとは異なる。口座を変える場合には、投資している資産を一度現金化し、そこから新たな投資を行わなければならないのだ。日本版ISAは取り扱い証券会社・銀行の間で、専用投信を設定し、それを主軸商品として販売する考えが強まっている。この点も、また、口座を変更する際には、資産を現金化しなければならない要因だ。

しかし、1投資家に1口座と限定され、しかも、5年間は口座変更ができない現行制度の下で、口座獲得競争が過熱することは間違いなく、今回の措置を通じて、そうした過熱が是正されれば、制度上、プラス効果がもたらされるものと期待できる。なお、日本版ISAの愛称は4月30日、「NISA」(ニーサ)に決定した。

(撮影:尾形 文繁)

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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