福岡の会社員が仕掛けた「仮設商店街」の先 いきなり脱サラではなく、楽しみながら
商人の町らしい発想で
あくせく働いた経済成長の時代も遠くなり、停滞ムードが続く昨今。ちまたでは「小商い」という言葉が静かな広がりを見せている。いきなり脱サラして資金をつぎ込んで勝負をかけるのではなく、無理せず、楽しみながら自分の好きな「商い」を営む。そんな生き方を模索しようと、福岡市の若手会社員たちが「ふくおか小商い部」という名の会を発足させるという。いかにも“商人の町”らしい発想ではないか。
主宰するのは、福岡市在住の企画プランナー、下野弘樹さん(35)。博多の台所といわれる柳橋連合市場がある中央区清川地区の活性化を手掛ける下野さんは、今年3月から7月にかけて、ある仕掛けを実行に移した。
地区にあるマンション1階のドラッグストア跡を活用し、小さな仮設の商店街を作ったのだ。題して「清川リトル商店街」。店舗当たりの面積は1坪(3・3平方メートル)で、出店料は1カ月1万5000円だった。
5カ月間の期間限定で出店者を募ったところ、デザイナーや茶農家など20~70代の男女12人が応募。焼き芋やハンドメード雑貨、農産品販売など11店舗(うち1店は2人の共同出店)が並んだ。
「人とのつながりができた」「新しいお客ができた」。店主たちは思い思いに手応えをつかんだ様子で、期間終了後も3人が共同出店することになった。
下野さんは「人が生き生きとする姿を目の当たりにして、方向性が間違っていないことを確信した」という。それが「小商い部」の発想に結び付いた。
下野さんは、長崎市出身。九州大の学生時代を福岡市で過ごし、国際貢献に興味を持った。せわしく動く同級生を横目に、就職試験は1社も受けず、卒業後はフリーターに。3年間のアルバイトでためた資金でヨーロッパを1カ月半旅した。