夢より自由。25万字の小説を書く異彩経営者 インテリジェンス創業者、鎌田和彦氏の好き嫌い(下)

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夢よりも自由が好き

楠木:鎌田さんは川の流れに身を任せ、ですね。やっていることはバラバラに見えるけれど、川としてはずっとつながっている。

鎌田:テーマごとにコンセプトみたいなものは一応ありますけどね。あるひとつの大きいテーマを、大きなビジョンでやり抜くというタイプじゃないのでしょうね。

楠木:なるほどね。僕が無理やり分類すると、人は4タイプに分かれます。まずは「傍から見ると遊んでいるようで、本人も遊んでいる」という、若き鎌田さんが嫌っていたバブル期の代理店の人みたいなタイプですね(笑)。もう1つは「傍から見ると仕事をしているようで、本人もガッチリ仕事をしている」というまっとうなタイプ。3番目が「傍から見ると真剣なのに、本人は遊んでいる」というタイプ。学者に多いですね、本人はレアメタル・オタクで楽しくてたまらないという先生の話を聞いたことがあるのですが、最高でしたね。

鎌田:うらやましいですね。

楠木:僕が好きなのはこのタイプと、残るひとつの「傍から見ると遊んでいるようなのに、本人は真剣」というタイプです。鎌田さんはおそらく、これでしょうね。ビジネスの世界だと非常に珍しい。傍から見て遊んでいるような人は本当に遊んじゃいますから。長編小説を書いたり、パン屋だって、道楽ではなく真剣にやる。

鎌田:100年続くベーカリーを目指すというビジョンですね。

楠木:仕事パートと遊びパートをくっきり分けて、それぞれを真剣にやる才能もあると思うのですが、鎌田さんの場合は、そういう感じでもない。渾然一体になっている。微妙に「どっちなんだ」みたいな(笑)。

鎌田:微妙な話になってきましたね(笑)。たぶん、自由でありたいと思っているからかもしれませんね。自分の好きなようにやりたいというのが根本ですよね。

楠木:インテリジェンスで「スチューデントレポート」を出している頃と、『奥さまはCEO』を出している今と、そんなに変わらないですよね。

鎌田:そうですね、レストランもベーカリーも小説も、それぞれ普通にプランして、PDCを回すみたいな感じでやっていますからね。

楠木:それが僕から見ると、「川の流れのように」というイメージになる。たまたま、今は小説が出てきただけで、これから予想もつかないものが出てくるかもしれませんね。

鎌田:僕はこうじゃなきゃいけないみたいなものはないですからね。各論に落ちていくとまじめだけれど、総論はテキトーなのかもしれない。インテリジェンスの頃は、小説なんて想定していないし、時間的にできないですよね。

楠木:先のことがわからないという意味では、引退は考えていないでしょうか。

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