対談(上):「好き嫌いで人事評価」はアリかナシか?
お仕着せが嫌い、ワインと共感が好き
楠木:今はインテリジェンスを離れていろいろな事業をされていらっしゃいますが、新丸ビルにあるベーカリー「ポワンエリーニュ」をつくられましたね。
鎌田:事業の手触り感みたいなものが欲しかったのでしょうね。「人材派遣業にとっては、毎日仕事をしてもらう方々がお客様だ」というとらえ方をすれば、彼らに就業機会というサービスを提供していたという言い方もできます。でも、実際仕事をしている人たちは、「インテリジェンスから就業機会というサービスを受けている」という認識はない。その点ベーカリーは、最終消費者に買ってもらって、食べてもらってなんぼです。BtoC最前線ですから。
楠木:僕が当時、鎌田さんと話をしていたら、「普通の人ができる仕事をやろうと思ってました」という言い方をしていましたね。割と僭越(笑)。でも、意味するところは「手触り感」ということですね。シンプルでわかりやすくて、お客さんに接している商売。立ち上げた頃はインテリジェンスにいらしたわけですが、経営のお仕事が忙しくても、世の中に直接かかわるような仕事をやりたいほうなのですか。
鎌田:正直、出発点は投資的だったし、今も事細かに自分で考えてやっているわけではありません。僕にとってのベーカリーは「何となく、そういうことがやれている自分に満足」みたいな感じでしょうか。一番時間をかけているのは、中古マンションの再生などを手掛けているアート・クラフト・サイエンスですね。
日本は他の先進国と比べて極端に中古住宅の流通量が少ない。僕が注目したのはその点です。実際、少子高齢化が進んでいく日本マーケットで新しいものを作り続けるわけにはいきませんよ。むしろ、再調達が難しいロケーションに建つ中古マンションを最新設備で再生していくほうが合理的だし、リユース、リサイクルといった時代感にもマッチしているわけです。最近はリカサ(ReCasa)というパッケージリフォームの新サービスも開始しています。
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